2006-09-30

[演劇]賃借人/임차인

20:00
ミョンボ小劇場
自由席 20,000W
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作・演出:ユン・ヨンソン/윤영선
出演:オ・ダルス/오달수、パク・スヨン/박수영、キム・ジヨン/김지영、キム・ナラ/김나라
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 四つの短い芝居から成るオムニバス形式の演劇。四つの作品は失われた思い出と人生の懐疑・苦痛というテーマで貫かれている。
 春・一章。場面は若い女性(キム・ナラ)が引っ越して来たばかりの部屋。片付けの最中に下の部屋の住人である中年女性(キム・ジヨン)がドアの所にやって来る。中年女性は若い女に、部屋のこと、以前の住人のこと、その前は自分が住んでいたことを延々と話し続ける。女の部屋に入るでもなく、自分の部屋に帰るでもなく、ドアの所に立ったまま……。
 夏・二章。深夜のタクシーの車内。うとうとする乗客(パク・スヨン)に饒舌に話しかける運転手(オ・ダルス)。いつしか運転手は自分の家庭内の問題を話し始める。夜遅く仕事を終えて家に帰ったら、妻がいなかった。お客さんならどうするか。ようやく妻が戻って来たが、何も聞けず、何も言えなかった。妻も何も言わない。自分はどうしたらいいのだろうか。……
 秋・三章。海辺で蟹を捕まえていた男(パク・スヨン)は、見知らぬ男と酒を飲んで帰ってきた。家には彼を待つ女(キム・ジヨン)がいた。女は男が帰っても、驚いて言葉が出ない。髪までぐっしょり濡れた男の姿は、まるで水から上がって歩いて来たようだと言い……。
 冬・四章。若い娘(キム・ナラ)が故郷の村の近くにいる。そこにいた男(オ・ダルス)が、娘が村にいた頃の思い出を語り始める。村はダム建設のため水の底に沈んだ。村人全員が村を去った時、娘が可愛がっていた犬は裏山に逃げたが、再び村に戻って来た。新しい家を建てて一緒に暮らそうと言った娘をひたすら待つために……。

 謎めいたストーリーが役者の緻密な演技で展開して行く、緊張感溢れる充実した舞台。春で常軌を逸した中年女性を演じ、秋でつかみ所のない妻を演じたキム・ジヨンは同じ役者と思えない変身ぶり。パク・スヨンは夏・秋とも演技のとぼけた味わいが魅力。キム・ナラは一見リアルで実は浮世離れした雰囲気の持ち主。そして、何と言っても、オ・ダルス。べらべら喋り捲る饒舌な運転手役では、いかにも実際にいそうなリアルな芝居と見事な滑舌を披露。人間の姿になった犬は、人間離れした役が得意なこの人の真骨頂。真に迫る犬の鳴き声も、「グエムル」で怪物の声を演じたオ・ダルスなら朝飯前? 個性的な風貌と優れた演技力ゆえ映画では怪人ぶりを発揮することの多いオ・ダルスだが、舞台でちらっと覗かせた素顔はシャイで繊細でとても素敵だった。



2006-09-28

[演劇]ビューティフル・サンデイ/뷰티풀 선데이

20:00
漢陽レパートリーシアター
G列10番
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作:中谷まゆみ

演出:チェ・ヒョンイン/최형인
出演:イム・ユヨン/임유영、シン・ヨンウク/신용욱、チョン・ウォンジョ/정원조
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 アンコール公演初日。客席に入ってびっくり。舞台装置ががらっと変わった。初演ではボックスを積み上げて可愛く小ぎれいに作った部屋が、やや古びてはいるものの生活感のある落ち着いた趣に。演技の面でもコミカルな(漫画的な)表現を排除し、生身の人間のリアルな実感を重視。韓国人のイメージする「日本作品」というファンタジーから韓国人の生活に根ざした舞台になったと言える。
 新キャストのイム・ユヨン(ウヌ=ちひろ役)、シン・ヨンウク(チョンジン=秋彦役)は実年齢が登場人物の設定に近く、本人の持ち味と演技力が相乗効果を挙げている。初演に続いて出演のチョン・ウォンジョ(チュンソク=浩樹役)は、拾われた病気の仔猫からチョンジンと対等のパートナーに変身。
 これは、悩みながらも真摯に生きる道を模索する3人の韓国の若者のドラマだ。



2006-09-25

[映画]私たちの幸福な時間/우리들의 행복한 시간

14:20
ロッテシネマ蘆原7館
J列9番 8,000W
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監督:ソン・ヘソン/송해성
出演:イ・ナヨン/이나영、カン・ドンウォン/강동원
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 孤児院出身のチョン・ユンス(カン・ドンウォン)はその生い立ちから人を信じることも愛することもうまくできない。それゆえ結果的に一人の人を殺してしまい、その上に自分がしてもいない殺人の罪まで被って死刑囚となっている。元歌手のムン・ユジョン(イ・ナヨン)は修道女のおばと一緒にユンスに面会に来る。ユンス自身が望んだことであったが、人間も世間も信じていないユンスは心を開かず、自らの孤独を守り続ける。一方、おばに連れられて渋々やって来たユジョンは3度の自殺未遂経験者。彼女もまた過去の出来事が原因で心に深い傷を負い、周囲の人々と円満な関係が築けない孤独な存在だった。

 コン・ジヨン(공지영)の同名のベストセラー小説が原作。死刑囚の男と自殺願望のある女が次第に相手に心を開き、惹かれ合い、愛し合い、幸福な時間を共有するようになる。しかし、二人の幸福な時間は死刑執行という残酷な終焉へ向かう時間でもある。題材からすでに感動的な物語を約束されたストーリと言える。
 主役二人の演技は真摯で好感が持てた。その割に映像的に印象の強い場面が少なかったのが残念。二人が会える場所は刑務所の面会室だけという設定上の制約があるとはいえ、ストーリーでなく映像で感動させてほしかった。刑務官役のカン・シニル、この作品でも良い役どころ。