2006-06-10

[演劇]カン・シニルの陳述/강신일의 진술

20:00
大学路・チョンボ小劇場
自由席 15,000W(ファンサービス/プレビュー期間10,000W割引)
-----
作:ハ・イルジ/하일지
演出:パク・グァンジョン/박광정
音楽:ハン・ジェグォン/한재권
出演:カン・シニル/강신일
-----
 小説を脚色した一人芝居。2001年にやはりカン・シニルが初演し、今回は5年振りの再演である。
 結婚10周年の記念旅行で新婚初夜と同じホテルの同じ部屋に泊っていた男が警察の取調室に連行されて来る。男は国立大学の哲学科教授。義兄殺しの容疑をかけられていると知った男は、自分には義兄を殺す理由がないと主張する。男は警察の尋問に応じて、今回の旅行と新婚旅行の話を始める。一刻も早く、ホテルの部屋で一人眠る愛する妻の元へ早く戻るためにだ。しかし、警察はホテルに妻はいないと言う。さらに、精神病院の院長だった義兄が殺された院長室のデスクに彼のカルテがあったとも。彼は義兄の診察を受けたことなどないと言い、ホテルの妻に電話をかけて見せる。尋問は続き、男は高校の教え子だった妻との馴れ初め、結婚後の留学生活について陳述を続けるが……。
 舞台は警察の取調室。中央に客席の方に向いたスチール机と椅子が一つ。下手奥に水のペットボトルとコップを置いたサイドテーブル。上手端には小さな電話台と電話がある。中央背景にはマジックミラーらしき大きな窓がある。
 カン・シニルは、時には立ったまま、時にはゆったりと椅子に腰掛けて、時には落ち着きなく取調室を右往左往しながら、陳述を続ける。客席をじっと見つめて話す様から、取調官は複数いて、客席の観客がその取調官に見立てられていると分かる。カン・シニルの演技の優れた点の一つは、舞台上の居所が確かなこと。一人の男の陳述という動きの少ない単調な演出になりかねない設定とうらはらに、カン・シニルはよく動く。同じ椅子に座るのでも場面によって椅子の位置を変え、陳述の内容によって立ち上がったり、歩き回ったり、座り込んだり。上手へ電話をかけに行けば、通話しながら電話を中央の机の上まで運んで来て妻との話を続ける。そのすべての動きについて、自分の舞台上の位置が非常に的確なのである。だから、見ていて演技に納得が行くし、気持ちのよささえ感じられる。
 また、陳述が進むにつれて、男の人格が次第に変わって見えてくるのも見事。安定した生活を営む国立大学教授、妻を愛する一人の男、好ましからぬ過去のある男、妻を愛する余り正常の範囲を逸脱しつつある男。ちょっとしたきっかけで、この男の隠れていた面が次々と現れて来る。
 男の話は、義兄殺しについての陳述であると同時に、妻への愛を語った陳述でもある。この作品は、一見ミステリーだが、実はラブストーリーでもあるのだ。ラストで男が「こんな時間に……妻に早くホテルに帰るように言ってやってください」と取調官に頼む時、「誰か奥さんをホテルまで送って行ってあげて」と思ってしまう自分がいた。
 陳述の回想部分で妻の声を流すのは演出上必要だろうが、妙に大きくエコーのかかった音響がイマイチ。もう少しうまい処理ができなかったかと思う。



0 件のコメント:

コメントを投稿