18:00
ロッテシネマ蘆原 3館
I列6番 6500W
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監督:源孝志
出演:黒木瞳、岡田准一、松本潤、寺島しのぶ、岸谷五朗
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江國香織の原作小説は未読。寺島しのぶが凄い。この作品のために体重を増やしたのだろうか。中年太りで腰周りには贅肉がつき、顔は丸く二重顎の危機に瀕し、ちょっと太目の2本の足で地面を踏まえた立ち姿は、お洒落な服をまとってはいるけれど実はサイズがぴちぴちで、かっぽう着にサンダル買い物籠の方が似合うことが容易に想像できてしまう。中年世代に足を踏み入れた女性の容姿を自身の肉体に具現化し、「女」から「おばさん」になりかけている女の恋と人生を見事に演じ切っている。この役者根性の前では、他の出演者がほとんど地のままのように見えてしまう。黒木瞳しかり、岸谷五朗しかり。
岡田准一と松本潤の裸体シーンはファンサービスなのだろうが、韓国の俳優を見慣れた目には「貧弱」としか映らない。
学生たちと一緒に見に行ったのだが、ある3年生の感想に「大学1年の頃はこういう恋愛は存在することが信じられない、絶対いけないと思ったけれど、日語日文学科に入って、日本の映画やドラマを見たり小説を読んだりして、今は少し理解できると思うようになった」と。世の中はこうして変わって行くのだなぁ。
2005-11-29
[映画]東京タワー
2005-11-26
[映画]僕の結婚遠征記/나의 결혼원정기
18:20
シノス・セントラル6 5館
G列8番 8000W
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監督:ファン・ビョングク/황병국
出演:チョン・ジェヨン/정재영、ス・エ/수애、ユ・ジュンサン/유준상
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農村で暮らすマンテク(チョン・ジェヨン)は、38歳にもなって女性の目をまともに見られず、当然独身。両親の悩みの種でもある。村の他家へ嫁いで来たウズベキスタンの女性を見て、竹馬の友ヒチョル(ユ・ジュンサン)と共にウズベキスタンへ見合い旅行に行く決意をする。しかし、度を越えた純情男のマンテクの見合いはうまく行かない。担当のララ(ス・エ)は北朝鮮出身の密入国者。偽造パスポートを手に入れるために急いでお金が欲しいララは、マンテクに個人レッスンまでして見合いを成功させようとする。その甲斐あって見合い相手とのデートにこぎつけたマンテクだったが、彼の心はララに魅かれ始めていた……。
日本と同様、韓国でも特に農村部での「嫁不足」は深刻であり、「国際結婚」の斡旋会社も数多く存在する。試みに今、韓国の代表的なポータルサイトDaumで「国際結婚」を検索してみたら、結果ページのトップに表示されるスポンサーリンク5つ全部がその手の会社のサイトだった。曰く「中国、ベトナム、ウズベキスタン、ロシア 高品格の国際結婚専門 カップルマネージャの1対1相談」「国際結婚専門会社、ベトナム、フィリピン、ウズベキスタン、モンゴル、中国、ロシア、会員」等々。そんな韓国社会の現実を捉えたKBSのドキュメンタリー番組がこの映画の素材となった。
が、社会問題はひとまず置いて、チョン・ジェヨン演じるマンテクの田舎臭い純情の情けなさがいい。38歳の男が朝こっそりパンツを洗ってるのも、老いた父親がうっかり声をかけてコトに気づいて狼狽するのも、気づかれたと気づいたマンテクがまた狼狽するのも、その情けなさが絶妙。愛すべき情けなさ。ようやくうまく行きかけている見合い相手とのショッピングデートの最中、マンテクからのプレゼントを期待してあれこれ商品を見て回る見合い相手には無関心で、ララが鏡の前で試していたスカーフをこっそり買ってララに贈ろうとするマンテク。その周囲の見えなさ、空気の読めなさがカワイイ。職務質問で外国人にパスポートの提示を要求する警察官を見て、ララはマンテクに自分のバッグを渡して「とにかく走って」と頼む。要はバッグをひったくられた振りをして、パスポートを所持していない密入国者であることがバレないようにしようという策略なのだが、マンテクは訳も分からずバッグを押し付けられ、走り出したら泥棒呼ばわりで警官に追い駆けられ、それでも必死で走り続けてとんでもなく遠くまで行ってしまって、とっぷり日も暮れてからボロボロの姿で歩いてホテルに帰ってくる。一筋の怒りも不満もなく、笑顔を浮かべて。その、腹立たしいほど純情でもどかしいほど素朴な笑顔がとてもいい。チョン・ジェヨン、男の純情の不器用さを演じたら右に出る者がいない役者。
2005-11-22
[映画]野獣と美女/야수와 미녀
18:40
タンソンサ6館
I列5番 7000W
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監督:イ・ケビョク/이계벽
出演:リュ・スンボム/류승범、シン・ミナ/신민아、キム・ガンウ/김강우、アン・ギルカン/안길강
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見映えのしない声優ク・ドンゴン(リュ・スンボム)は目の不自由な美女チャン・ヘジュ(シン・ミナ)に恋をする。ドンゴンは目の見えないヘジュに優しく接し、ドンゴンをハンサムで頼りがいのある男性と思い始めたヘジュもドンゴンに好意を持ち始め、二人は「野獣と美女」のカップルとなる。ところが突然、ヘジュの目は手術で見えるようになると言われ、ドンゴンはうろたえる。手術後いよいよ包帯の取れる日、勇気を奮って花束を手に病室を訪れたドンゴンだったが、目の開いたヘジュは目の前の男性がドンゴンであるとは気づかない。とっさに「ドンゴンの友人」を装って、「ドンゴン」はハワイへ出張中と嘘をつくドンゴン。さらに、ドンゴンが目の見えないヘジュに説明していた「カッコイイ自分」のモデルである高校時代の同窓生タク・ジュナ(キム・ガンウ)がヘジュに出会い、ヘジュに一目ぼれしてしまう。今さら名乗りをあげるわけにも行かないドンゴンは、ヘジュの周囲をうろつき、ジュナとヘジュの邪魔をしようとする。しかし、不釣合いな「野獣と美女」とは比べ物にならないお似合いの二人を見て、本当にハワイへ行ってしまうことを決意する……。
ディズニー映画「美女と野獣」のタイトルをひっくり返した「野獣と美女」。主人公はあくまでもリュ・スンボム演じる「野獣」である。冴えない男が恋する女のために、誠心誠意、必死で努力する。その姿は滑稽だが、本人は真剣かつ誠実なゆえに見る人の心を打ち、彼の真心は彼女の心に届く。本気で恋している最中は周囲に滑稽な姿を晒してばかりというのは、ブサイクでもハンサムでも絶世の美女であっても多分変わらぬ恋愛の真理。「野獣と美女」というありがちな枠組にマンガ的演出を取り入れた気楽なラブコメディだが、リュ・スンボムの演技力が喜劇の中に普遍的な恋愛を見せてくれている。
2005-11-16
2005-11-15
[映画]わが生涯で最も美しい一週間/내 성애 가장 아름다운 일주일
17:50
タンソンサ(団成社)5館
J列8番 6000W(チケットパーク1000W割引券利用)
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監督:ミン・ギュドン/민규동
脚本:ユ・ソンヒョプ/유성협
出演:オム・ジョンファ/엄정화、ファン・ジョンミン/황정민、イム・チャンジョン/임창정、ソ・ヨンヒ/서영희、キム・スロ/김수로、キムユジョン/김유정(子役)、ユン・ジンソ/윤진서、チョン・ギョンホ/정경호、チュ・ヒョン/주현、オ・ミヒ/오미희、チョン・ホジン/천호진、キム・テヒョン/김태현
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「ラブアクチュアリー」や「マグノリア」のような作品ならいつでも大歓迎という脚本のユ・ソンヒョプが、6組の人々の人生と愛を1週間の出来事に描いた。6組12人の登場人物がすべてこの映画の主役であり、自分の人生の主役である。12人の主役たちが織り成す複雑な人間模様を2時間のしゃれた作品にうまくまとめたのは、短編映画を手がけて来たミン・ギュドン監督の手腕であろう。韓国の社会で生きる韓国人の様々な姿を垣間見ることが出来るのも、この作品の面白さの一。「ラブアクチュアリー」と「マグノリア」、見なくては。
2005-11-14
[演劇]ラブレター/러브레터
15:00
漢陽レパートリーシアター
A列5番 30000W
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脚本:A.R.Gurney
演出:チェ・ヒョンイン/최형인
企画:キム・ソングン/김성근
出演:イム・ユヨン/임유영、ソル・ギョング/설경구
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この週末は土日で3回、同じ演目、同じキャストでの観劇である。舞台俳優から映画の世界に移って韓国のトップ映画スターになったソル・ギョングの生の舞台を見られるのは、これが最初で最後かもしれないのだから「ソル・ギョング祭」状態もやむをえまい、と自分に言い訳しつつ。
昨日よりは落ち着いた演技で、二人の呼吸も上々。ただ、二人ともオーバー気味の演技で、年齢が若く見える。アンディとメリッサは小学2年の時の同級生で、最後の場面では55歳。それがどうしても40歳前後にしか見えない。若い頃から不安定な精神状態を抱え、薬と酒に依存しながら若さと美しさを失って老いさらばえていくメリッサ、海軍から法科大学院を経て上院議員となり、55歳にしてジョギングを欠かさずスリムな体型を維持するアンディ。二人の中年以降の輪郭がセリフでは明確に語られているのに、役者を通すと曖昧になってしまっている。
[演劇]ラブレター/러브레터
18:30
漢陽レパートリーシアター
A列5番 30000W
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脚本:A.R.Gurney
演出:チェ・ヒョンイン/최형인
企画:キム・ソングン/김성근
出演:イム・ユヨン/임유영、ソル・ギョング/설경구
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「ソル・ギョング祭」最終回。最後の出演に思うところがあったのか、ソル・ギョングの感情移入はこれまで見た5回の公演の中で最も激しかった。途中何度か嗚咽を堪えるためにかなり長い間があいたほど。この真実味あふれる感情移入がソル・ギョングの長所であると同時に、弱点でもある。役者である以上、涙も演技で見せてほしいもの。たとえ撮り直しや編集がきく映画であっても。役になりきることと感情移入することは同じではない。気持ちを静めようとコップの水に手を伸ばす人物は、アンディでなく、ソル・ギョングだった。
この後は次作の映画撮影の準備に入るそうで、当分はまた映画の世界で活動するのだろうが、良い脚本を選んで、良い演技をしてほしい。
2005-11-13
[演劇]ラブレター/러브레터
19:30
漢陽レパートリーシアター
A列10番 30000W
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脚本:A.R.Gurney
演出:チェ・ヒョンイン/최형인
企画:キム・ソングン/김성근
出演:イム・ユヨン/임유영、ソル・ギョング/설경구
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「ラブレター」4度目の観劇はお目当てソル・ギョングが先々週とは相手役を変えてイム・ユヨンと共演。衣装もストライプのスーツに黄色のネクタイ・ポケットチーフに変わった(前回は無地のスーツに赤いネクタイ・チーフ)。メリッサ役のイム・ユヨンが芝居っ気たっぷりの演技で、ソル・ギョングの過剰気味のリアクションもうまく合っている。ソル・ギョングは役への感情移入が強く、終盤で慟哭を抑えられない場面も。最後のメリッサの死が先に織り込まれてしまってはいけないはずだが。全体にやや荒削りな印象を拭えない。
2005-11-12
[公演]宝塚歌劇団韓国公演
19:30
慶熙大学校平和の殿堂
S席B列66番 96,000W(早期予約20%割引)
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宝塚歌劇団星組による「ベルサイユのばら」と「ソウル・オブ・シバ」。日本ではチケット取るのが大変という「ベルばら」だが、こちらでの入りは8割程度。幕開きを知らせるトップ・湖月わたるによるアナウンスが、何と韓国語なのに、まずびっくり。
「ベルばら」見るのは初めてで、漫画も読んでないのだが、それはそれとして楽しめる内容。何より、一糸乱れぬ踊りの技術に、寸分狂わぬ居所の確かさ、さすが宝塚の舞台である。一方、マリー・アントワネットは「王妃」なのか「女王」なのか、「私の心は生きながら屍」って心が屍になれるのか、脚本には若干の疑問も。
「ソウル・オブ・シバ」では歌詞とセリフの一部を韓国語で。「불고기 먹어(プルコギ、食べなさい)」のセリフは笑えた。「すみれの花咲く頃」と「アリラン」のメロディを取り入れて、韓国公演のために新たに編曲した曲もあり。ダンスのレベルだけなら、ミュージカル全盛の韓国も負けていないが、振付のバラエティは長年の実績で豊富なレパートリーを持つ宝塚ならでは。
大階段のフィナーレもお約束通り、宝塚はやはり宝塚である。
最後の、湖月わたるの挨拶はすべて韓国語。時々つっかえながらも一生懸命練習した韓国語でお客さんに挨拶しようとするトップの姿に客席は大喜び。宝塚のプロ意識の高さが際立った公演だった。
2005-11-11
[演劇]ラブレター/러브레터
19:30
漢陽レパートリーシアター
D列9番→A列10番 30000W
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脚本:A.R.Gurney
演出:チェ・ヒョンイン/최형인
企画:キム・ソングン/김성근
出演:チェ・ヒョンイン/최형인、イ・デヨン/이대영
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劇場で偶然会った演劇好きの友人が、連れが来られなくなったからこっちで一緒に見ようと言ってくれて、最前列ほぼ中央の席で見ることに。
3度目の「ラブレター」はメインキャスト二人のチーム。圧巻。子供時代から思春期、青年期が本当にその年代の感性を持った男女に見える。手紙のやりとりをセリフのやりとりのごとく、ぴったりと息の合った間で聞かせ、緩急自在。抑制の効いた自然な演技が長年の二人の友情と愛情の姿を描き出す。メリッサの母へ宛てた最後の手紙を読むアンディ(イ・デヨン)を死んだメリッサ(チェ・ヒョンイン)横から真っ直ぐに見つめる構図によって、この作品の構成がくっきりと顕になり、そこには長い時間をかけて見守り続けた二人の人生が確かに存在していた。
キャストは違っても基本的な演出は同じ。それでこれほどに差が出るとは。
2005-11-08
[映画]ジョゼと虎と魚たち/조제, 호랑이 그리고 물고기들
16:20
シネキューブ光化門1館
B列79番 7000W
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監督:犬童一心
出演:妻夫木聡、池脇千鶴
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下半身麻痺のジョゼ(池脇)と大学生の恒夫(妻夫木)の出会いと別れのラブストーリー。日本でも小規模な公開からじわじわと人気が高まり上映館が増えたことが話題になった作品だが、ここ韓国でも、1年前に公開されて一部映画ファンの高い評価を得ながら地味に上映終了、しかしその後のラブコールに応える形で公開1年後に再度上映が決まるという極めて異例の展開を見せた。
平日夕方とあって、客席はまばら。内半分近くが一人で見に来ていたのが目を引いた。
2005-10-28
[演劇]ラブレター/러브레터
19:30
漢陽レパートリーシアター
A列5番 30000W
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脚本:A.R.Gurney
演出:チェ・ヒョンイン/최형인
企画:キム・ソングン/김성근
出演:キム・ボヨン/김보영、ソル・ギョング/설경구
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1日置いて2度目の観劇。前回よりはるかに良かった。驚いた。
まず、前半の「力道山」が消えたこと。顔の表情の芝居が控えめになり、その分セリフが生きてきた。さらに、ストーリーの先を追わず、その時々の二人をきっちり描き出して、ストーリーの起伏が際立つようになった。セリフのミスは前回よりむしろ多かったのだが。
ラスト近く、前回は42~3歳止まりだったアンディ(ソル・ギョング)とメリッサ(キム・ボヨン)が今回は50歳に見えるまでに。あと一息と思っていたら、幕切れの暗転で闇の中に消えていくアンディの顔は疲れた初老の男性に見えた。やはり、さすが、これでこそ、ソル・ギョング。
客席の反応も非常によく、舞台上の二人が芝居を楽しんでいる様子が手に取るように分かるのも嬉しかった。
2005-10-26
[演劇]ラブレター/러브레터
19:30
漢陽レパートリーシアター
D列10番 30000W
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脚本:A.R.Gurney
演出:チェ・ヒョンイン/최형인
企画:キム・ソングン/김성근
出演:キム・ボヨン/김보영、ソル・ギョング/설경구
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日本でも「ラブ・レターズ」のタイトルで上演される男女二人の朗読劇。漢陽レパートリーのレパートリーの一つで、今回のキャストは男女5人ずつ、組み合わせを変えつつ二ヶ月に渡って上演される。お目当てはもちろんソル・ギョング。かねてから一度舞台を見たいと願っていたのが、思いがけず実現し、最初の出演日に早速駆けつけた。
が、今ひとつ飽き足りない。要所ではしっかり感動させてくれるのだが、全体として上滑りしているというか、平板な印象が拭えない。元々脚本が持つ面白さと感動を超えて、俳優が見せてくれるものが薄く、前半何度か「力道山」の表情がちらつくのも痛い。
共演のキム・ボヨン共々、ラストが50代の男女には見えず、本人が言っていた通り、もっと歳を取ってからやるべき芝居だったかも。ソル・ギョングの実力はこんなもんじゃないと思うだけに、もどかしい。
まだ何度か見に行く予定なので、今後に期待。
2005-10-03
[クラシック]鄭明勲とソウル市響、新たな出発
19:30
世宗文化会館大劇場
S席 B列18番(1階2列目下手寄り) 45000W(チケットリンク会員10%割引)
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指揮:チョン・ミョンフン/정명훈
曲目:シューベルト交響曲第8番「未完成」、マーラー交響曲第1番「巨人」
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「清渓川迎水特別演奏会」と銘打たれた公演。清渓川復元の完成を祝うイベントの曲目が「未完成」とは? プログラムに掲載されたチョン・ミョンフンの挨拶 を読んで疑問氷解。今年3月ソウル市に請われて芸術監督に就任したチョン・ミョンフンがオーディションを敢行して団員を選びなおしたオケの実力は予想以上。しかし、音色・音量の豊かさに欠け、テンポの速い部分や合わせるのが難しい箇所では悲鳴を上げているような演奏になるのが、このオケの限界か。反面、弱く小さな音に不思議な雰囲気と力強さを持つ。マーラーでは、指揮者が明らかにオケの能力を超えた演奏を要求、全身で指示を出し、叱咤激励し、オケ全員を引っ張る指揮はまるで踊っているようだった。こんなチョン・ミョンフンの姿を見られるとは。瞬時でも余裕があれば食い入るような目で指揮棒を追い、指揮者の意図に必死に縋って行こうとするオケ共々、ラストは残り1分で決勝点を争うスポーツの死闘のごとく。
2曲終わって客席の拍手に応えて再登場したチョン・ミョンフンは「今日はアンコールを準備していません」 え? 今日はソウル市響の出発の日で、今はまだ未熟なオーケストラだからアンコールはしない、と。なるほど。アンコール曲の代わりにと演奏したのは「愛国歌(韓国の国歌)」だった。休憩時間にスタッフが譜面台に配ってた(一体何を配ってるのか不思議だった)のはこれか。演奏後はコンマスと握手するとそのままコンマスの手を引っ張っりながら退場して、聴衆のアンコールを断固として受け付けず。チョン・ミョンフンは本気だ。
終演後のロビーで人の輪ができていたので覗いてみると、今を時めくソウル市長・イ・ミョンパクの姿が。ヒョンデ(現代)建設叩き上げの経歴は伊達でなく、ソウル市庁前広場、ソウルの森、清渓川復元と数々の大規模建設プロジェクトを成功させた人物は、チョン・ミョンフンを呼んでソウル市響の大改革を推進する豪腕の持ち主でもあった。
2005-10-02
[映画]ミスター主婦クイズ王/미스터 주부 퀴즈왕
14:30
大韓劇場6館
O列15番 7000W
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監督:ユ・ソンドン/유선동
出演:ハン・ソッキュ/한석규、シン・ウンギョン/신은경、コン・ヒョンジン/공형진、ソ・シネ/서신애、キム・スミ/김수미
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ハン・ソッキュのコメディ出演で話題の作。TV局アナウンサーの妻を持つジンマン(ハン・ソッキュ)は専業主夫。主婦仲間の頼母子講で失った3000万Wを妻に内緒で補填するため、3週勝ち抜けば賞金3000万Wというクイズ番組「主婦クイズ王」への出演を決意、女装して予選のテストに臨むが……。専門職ながら今ひとつ芽の出ない司会アナのスヒ(シン・ウンギョン)、ジンマンの主夫業テクのルーツである母親(キム・スヒ)、儒教社会の家長そのもののジンマンの父親と粒の揃った俳優陣で楽しめるフェミニズム風味のコメディ。
[映画]親知らず/사랑니
16:30
大韓劇場9館
G列4番 7000W
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監督:チョン・ジウ/정지우
出演:キム・ジョンウン/김정은、イ・テソン/이태성、キム・ヨンジェ/김영재、チョン・ユミ/정유미
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30歳になる予備校の数学講師イニョン(キム・ジョンウン)は、17歳の教え子イ・ソク(イ・テソン)と恋に落ちる。う~ん、それがどれほど本気の恋であっても、一人前の大人の女がやりたい盛りの17歳を誘惑しちゃいかん、という倫理観持ってる人間には共感し難い。イニョンがなぜそこまでイ・ソクに魅かれるのか、よく分からないだけに尚更。初恋の人と同じ顔、同じ歳、同じ名前、という設定ではあるのだが。年下の恋人イ・ソク、初恋の相手だったイ・ソク、現在の同棲相手チョンウ(これも年下男!)と3人の男に囲まれてのパーティーは、そりゃ、いい気分でしょ、アンタ、でもそんなことしてると今にシッペ返し食うよ、と思わず説教したくなり。自分が30の時にこの映画を見ていたら、今の自分が30だったら、イニョンに共感できたのだろうか。
2005-09-30
[映画]君は僕の運命/너는 내 운명
18:40
ソウル劇場12館
F列16番 7000W
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監督:パク・チンピョ/박진표
出演:チョン・ドヨン/전도연、ファン・ジョンミン/황정민、ソ・ジュヒ/서주희、ユン・ジェムン/윤제문、リュ・スンス/류승수
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田舎の純朴な青年(ファン・ジョンミン)がタバン(茶房)のアガシ(チョン・ドヨン)に一目惚れ。何とか結婚にたどり着き、二人の蜜月が始まる。この蜜月がそれはもうイチャイチャ、ベタベタ、スクリーンを眺めてるこちらが気恥ずかしくなって来るほど。しかも延々と続く。一体いつまで続くのか、これってこんな映画だっけ?と思い始めた所でストーリーは暗転、急展開し、前半の「私は運のない女だから」というチョン・ドヨンの台詞が後半じわじわ効いてくる。後半のチョン・ドヨンは一度もこの台詞を口にしないのだが。
チョン・ドヨンの出演作は好きでも(「接続」「私にも妻がいたらいいのに」「スキャンダル」「人魚姫」等)、チョン・ドヨン自身は好きになれなかったのが、初めて彼女に共感した。チラシに載るパク・チンピョ監督の言葉「運命的な愛は初めて出会った時に成り立つのでなく、あらゆることを耐え抜き、守り通した時初めて運命的な愛になるのだ」
2005-09-16
[映画]外出/외출(邦題:四月の雪)
19:00
シネキューブ光化門2館
7000W
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監督:ホ・ジノ/허진호
出演:ペ・ヨンジュン/배용준、ソン・イェジン/손예진
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言わずと知れた「ヨン様」ことペ・ヨンジュン主演の新作。不倫関係の男女が交通事故に遭い、それぞれの配偶者(ペ・ヨンジュン、ソン・イェジン)が出会い、恋に落ちる。「八月のクリスマス」「春の日は行く」のホ・ジノ監督らしく、映画は淡々としたストーリーと映像に終始する。ソン・イェジンの演技力に思わず共感すること度々。この映画を見た男性がペ・ヨンジュンに共感できるのかどうかぜひ知りたい所だが、この映画を見る友人・知人の男性が思い当たらない。この作品が気に入った人はぜひホ・ジノ監督の上記2作品も見てほしい。
2005-09-02
[映画]拍手する時去れ/박수칠 때 떠나라
18:55
ソウル劇場3館
I列11番 7000W
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監督:チャン・ジン/장진
出演:チャ・スンウォン/차승원、シン・ハギュン/신하균、シン・グ/신구、リュ・スンヨン/류승영、パク・チョンア/박정아
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殺人事件の実際の捜査をTVが生中継! 捜査本部や取調室には何台ものカメラが設置され、刻一刻と変わっていく捜査状況にTV局のスタジオで専門家、コメンテイター、さらには番組参加の一般視聴者の見解が飛び交う。刑事(チャ・スンウォン)と容疑者(シン・ハギュン)が対峙する取調べは真実なのか芝居なのか、視聴率第一主義のTV局幹部の思惑が絡み、捜査は難航。殺人事件の真相は? 一味違ったミステリー。
2005-08-28
[映画]ウェルカム トゥ トンマクコル/웰컴 투 동막골
13:20
ユトアシネマ4館
7000W
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監督:パク・クァンヒョン/박광현
出演:チョン・ジェヨン/정재영、シン・ハギュン/신하균、カン・ヘジョン/강혜정、イム・ハリョン/임하룡、ソ・ジェギョン/서재경
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時は朝鮮戦争真っ只中。隊を離脱した国軍(韓国)兵士、隊を見失った人民軍(北朝鮮)兵士、墜落した飛行機から脱出した米軍兵士が図らずも山奥の同じ村にたどり着く。その「トンマクコル村」は、今が戦争中であることも知らない住民たちの穏やかな時間が流れる理想郷であった。「シュリ」「JSA」等の流れを汲む南北対立を素材にした作品。朝鮮半島を舞台にそれぞれの正義を掲げていた南・北・米の対立が、トンマクコルではこの上なく滑稽で馬鹿馬鹿しいものとして露見する。「俺たち、他の所で会っていたら、もっと面白かっただろうに」という国軍兵士(チョン・ジェヨン)のセリフが胸を打つ。理想郷「トンマクコル」を象徴する村の住人を不思議な雰囲気を持つカン・ヘジョンが好演。観客動員数も「シュリ」を抜いて韓国映画の歴代興行成績4位を記録(9月19日現在)。
2005-08-12
[映画]親切なクムジャさん/친절한 금자씨
16:30
ソウル劇場3館
I列15番 7000W
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監督:パク・チャヌク/박찬욱
出演:イ・ヨンエ/이영애、チェ・ミンシク/최민식、キム・シフ/김시후、ナム・イル/남일우、キム・ビョンオク/김병옥
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「復讐は我が手に」「オールドボーイ」に続くパク・チャヌク監督の復讐シリーズ第3作。イ・ヨンエを起用して女性の復讐劇を描き、独特の復讐の美学が展開する。「涙を流しながら微笑むクムジャさん」のワンカットでイ・ヨンエの演技力が絶賛されていたのだが、確かにこのカットだけでも一見の価値がある。前作と逆に復讐される側に回ったチェ・ミンシクの微妙な存在感、さりげなく一場面のみに登場する人気俳優たち、タイトルロールを始めスタイリッシュな映像美等々、見所の多い作品。11月12日日本公開も決定した模様。
2005-06-26
2005-06-16
[演劇]ほんとうのハウンド警部/진짜 하운드 경위
19:30
チョンボ小劇場
7000W
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原作:トム・ストッパード
芸術監督:パク・クァンジョン/박광정
演出:チュ・ジヒ/주지희
出演:チェ・ソニョン/최선영、チャン・ソニョン/장선연、ファン・ジヨン/황지연、ソン・ファンギョン/성한경、ハン・スンド/한승도、パク・チュヒ/박주희、チョン・ジョンフン/전정훈、イ・ジホ/이지호
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「劇団パーク 2005 ワークショップ公演」と銘打たれた大学路の小劇場演劇。知り合いのチョン・ジョンフン氏が演劇評論家役で出演。二人の演劇評論家が芝居を見ているうちに、あるきっかけで舞台に上がって自分が見ていたはずの芝居の世界に入って行ってしまう。事前にネットで情報を探した際、舞台より脚本が面白いという評があったのだが、どうしてどうして非常に面白い舞台だった。
劇中劇はアガサ・クリスティを思わせる英国の推理劇で、韓国人俳優が演じるのは不自然なのだが、その不自然さと不条理な展開が相俟って絶妙なバランスで非現実的空間をリアルに作り出していた。これは脚本読まねば。
帰りに、俳優イ・ジョンジェが経営するイタリアンレストラン「イルマーレ」で食事。
2005-06-09
[映画]南極日記/남극일기
20:10
ソウル劇場11館
E列11番 7000W
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監督:イム・ピルソン/임필성
出演:ソン・ガンホ/송강호、ユ・ジテ/유지태、キム・ギョンイク/김경익、パク・ヒスン/박희순、ユン・ジェムン/윤 제문、チェ・トンムン/최덕문、カン・ヘジョン/강혜정
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人気俳優ソン・ガンホとユ・ジテの共演する南極を舞台にした超大作ということで、撮影中から注目と期待を集めていたが、いざ封切られると賛否両論、思いがけず早期に上映終了しそうだったため、忙しい時間を縫って映画館へ足を運んだ。
世界初の南極「到達不能点」への無補給横断を目指す韓国隊6人。撮影中の宣伝文句は「正体不明の病気と予期せぬ事故のため集団狂気状態に陥って行く南極探検隊員たちの物語を描いたミステリースリラー」だったのだが、実際は雪と氷の中をひたすら歩いて行く映像が繰り返される、風景の変わらない実験的ロードムービー。チェ・ドヒョン隊長(ソン・ガンホ)の鬼気迫る執念の理由、80年前の英国隊の謎、「到達不能点」自体への興味とが盛りだくさんなテーマの割に映像と演出が単調なのが惜しい。
「脚本をこうしたら、演出をこう変えれば…」と映画監督志向など全くない私ですらふと思った。ある意味、考えさせられる作品。
2005-06-05
[映画]シルミド/실미도
15:00
シネマオズ2館
自由席 7000W
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監督:カン・ウソク/강우석
出演:ソル・ギョング/설경구、アン・ソンギ/안성기、ホ・ジュノ/허준호、チョン・ジェヨン/정재영、カン・シニル/강신일、イム・ウォニ/임원희、カン・ソンジン/강성진
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昨年6月日本でも公開された作品。ソル・ギョングのファンサイト主催の上映会で鑑賞。
さすがカン・ウソク監督と言うべきか、脚本と演出がうまく噛み合って、歴史的意義云々を抜きにしても良く出来た映画である。特に、冒頭タイトルが出る前の導入部で、北朝鮮の青瓦台侵入事件とカン・インチャン(ソル・ギョング)の殺人未遂事件を交互に見せて、この作品の背景となる684部隊成立の事情を一気に分からせる演出は、迫力といいカッコ良さといい、非常に優れている。
状況の変化で無用となってしまった特殊部隊の選択、訓練兵たちの「名前」へのこだわりなど、普遍的な問題をも突きつけてくる映画である。
2005-05-26
[公演]沖縄音楽演奏会
19:30
在韓日本大使館 広報文化院 3階 ニューセンチュリーホール
自由席 無料(予約制)
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主催:在韓日本大使館 広報文化院
助成:日韓文化交流基金
出演:翁長洋子、本永優子、翁長良忠 他
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学生に誘われて出向いた日韓友情年2005イベントの一。「琉球と韓国、虹の橋をかけて」という副題のついた琉球筝の演奏会。創作曲「花清ら」、古典曲「かぎやで風」「渡りぞう」「滝落菅撹」という琉球筝の曲の他、「さくらさくら」「涙そうそう」「アリラン」、さらには「エルクンバンチェロ」「カノン」まで多彩なプログラム。 「アリラン」と「芭蕉布」は場内全員で合唱。最近の曲ではありえない高音が逆に新鮮に感じられる。聞いて心安らぐのは琉球伝統の曲調だが、西洋の曲でのパイプオルガンに通じる響きの美しさも印象に残った。演者の心の温かさが客席に伝わってくる公演だった。
130人程度の小ホールだが、数十人の立ち見が出る盛況。3月中旬から4月中旬にかけて、「世論」に流され数々の文化交流を中止した愚を思う。
2005-05-16
[公演]鳳山タルチュム/봉산탈춤
15:00
韓国国立劇場 タルオルム劇場
自由席 15000W
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主催:国立劇場、韓国仮面劇研究会
出演:ヤン・ソウン/양소운、キム・ギス/김기수、チョン・ジェチョン/정재천、チョ・ウニョン/조운용、チャン・ジュンソク/장준석、キム・ベクス/김백수、キム・ソンミ/김선미 他
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「全科場完版公演」と銘打たれた鳳山タルチュムの公演。所要時間4時間45分(休憩20分含む)。上演された7つの科場は以下の通り。
第1科場 사상좌춤/四上佐舞
第2科場 팔목중춤/八墨僧舞
第3科場 사당춤/寺党舞
第4科場 노장춤/老丈舞
第5科場 사자춤/獅子舞
第6科場 양반춤/両班舞
第7科場 미얄춤/ミヤル舞
それぞれの科場は独立した内容で、一部登場人物が重なる場もある。場によって、舞踊主体のもの、演劇的要素が強いものなど多様な内容。本来は神事の一環であり、宗教的にも芸能的にも非常に様々な要素が混在していて興味深い。猿を子役が演じるのに驚いた。まるで「靱猿」である。朝鮮半島に猿はいなかったと聞いているのだが。
舞台下手でチャンゴ、ジン、ピリなどの楽器が音楽を担当。80歳近い?お婆さんヤン・ソウンが叩くチャンゴが5時間の舞台を引っ張った。弱々しくも見える小柄な身体でよくもそこまで。気迫のチャンゴにひたすら感動。
客席は満席。以前通っていた完唱パンソリ同様、意外に若い人が多い。10歳以下の子供連れもちらほら。5時間の長丁場と知らずに来たらしい。客席から「엄마, 앙녕!(おかあさん、元気?)」と可愛らしい声がかかる微笑ましいハプニングも。
2005-05-05
[映画]私にも妻がいたらいいのに/나도...아내가 있었으면 좋겠다
19:00
シネマオズ3館
自由席 7000W
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監督:パク・フンシク/박흥식
出演:ソル・ギョング/설경구、チョン・ドヨン/전도연、チン・ヒギョン/진희경、ソ・テファ/서태화
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ソル・ギョング主演作と知らずに見て、それと気づかないまま「主演男優」のファンになった、私にとっては特別な作品。主人公キム・ボンス(ソル・ギョング)が見事に好みのツボにはまり、ビデオ見ながら「その女はやめろ~! アンタの手に負える女じゃない!」「だからアンタはいつまでも結婚できないんだってばっ!」と応援してる気で突っ込み入れまくってたのも懐かしい思い出。それほどキム・ボンスにのめり込めるのだ。
今回はソル・ギョングファンのカフェが主催する上映会にて鑑賞。主人公2人の背景の描き方、伏線の生かし方などに難はあれど、ストーリー、映像、音楽のどれも繊細に作られていることをスクリーンで再確認できて嬉しかった。
2005-04-29
[映画]ダンサーの純情/댄서의 순정
18:50
ファンタジア1館
G列2番 7000W
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監督:パク・ヨンフン/박영훈
出演:ムン・グニョン/문근영、パク・コンヒョン/박건형
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中国・延辺(ヨンピョン)の朝鮮族であるチャン・チェリン(ムン・グニョン)はスポーツダンサーの姉の身代わりで韓国へやって来る。彼女のパートナーは、かつてトップダンサーだったナ・ヨンセ(パク・コンヒョン)。ヨンセはチェリンと偽装結婚し、全く経験のない彼女にダンスを教え込んで国家代表選抜大会に出場しようと猛練習を重ね、二人の間に信頼と愛情が芽生えて行くが……。高校生女優ムン・グニョン主演の話題作。主人公2人が特訓をして臨んだというダンスシーンの振付・演出・カメラワークも見ものだが、世間知らずで純真な少女が愛を知り大人になっていく過程を好演したムン・グニョンの今後が楽しみ。相手役のパク・コンヒョンの演技は日本人好みかも。
2005-04-19
[映画]お母さん/엄마
20:15
ソウル劇場9館
H列 23番 7000W
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監督:ク・ソンジュ/구성주
出演:コ・ドゥシム/고두심、ソン・ビョンホ/손병호、キム・イェリョン/김예령
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末娘の結婚式に出席するため、母(コ・ドゥシム)はヘナム(海南/해남)からモッポ(木浦/목포)まで80kmの道を歩いて行くことを決意する。極度に乗り物が苦手な母は自動車に乗れないのだ。母を案じて交代で同伴する子供たちと一緒に険しい山道や土砂降りの雨の中を歩き続ける母の脳裏には、子供たちのこと、死んだ夫のこと、これまでの人生が浮かび上がる。要は「お母さん」再評価ロードムービーなのだが、ロードムービーとしては単純、意図的に挿入したコメディの要素は「お母さん」再評価の情緒と噛み合わず、せっかくの全羅南道の景色も印象が薄く、何を見せたいのか分かりにくい。「人魚姫/인어공주」に続いて、コ・ドゥシムの「母」は天下一品なのだが。
2005-04-14
[映画]甘い人生/달콤한 인생
18:50
ソウル劇場10館
I列16番 7000W
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監督:キム・ジウン/김지운
出演:イ・ビョンホン/이병헌、キム・ヨンチョル/김영철、シン・ミナ/신민아
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7年間も組織のために忠実に働き、ボス(キム・ヨンチョル)の信頼も厚かったソヌ(イ・ビョンホン)が、ボスの恋人(シン・ミナ)にふと心動かされた瞬間。それが原因となってソヌは組織を敵に回して戦わなければならなくなる。予告編に暴力的な場面が多く気が重かったのだが、スタイリッシュな映像とテンポの良いストーリー展開に惹きつけられた。人気俳優イ・ビョンホン主演のアクション映画ながら、ソヌとボスの対決場面で明らかになる自分自身にも不可解な人の心の不条理。娯楽アクションとは一線を画した作品である。撮影技術を駆使してみせるのは最近の韓国映画の流行だが、凝りに凝った人工的な構図や色彩が作品の意図を浮かび上がらせた成功作。ソヌの無言の笑顔が彼の人生をどれほど雄弁に物語っていることか。
2005-04-10
[公演]金徳洙のダイナミックコリア
17:00
忠武アートホール
1階 6列18番 R席 36000W(チケットリンク会員10%割引)
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主催:(社)サムルノリ ハンウルリム、忠武アートホール
(株)ナンジャンカルチャーズ
芸術監督:キム・ドクス(金徳洙)/김덕수
出演:キム・ドクス/김덕수、ハンウルリム(한울림)芸術団
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忠武アートホール開館フェスティバルの一。「ダイナミックコリア」は、サムルノリの芸術性を認知させたキム・ドクスが韓国伝統芸能の紹介と普及を目的に構成したプログラムで、内容は以下の通り。
ピナリ/비나리 : 公演開始に当たって観客への挨拶と祈り
イルコファラク/일고화락 : 太鼓の大合奏
パンソリ ハンマダン/판소리 한마당 : パンソリ
プチェチュム/부채춤 : 扇を使った舞踊
サムド農楽カラク/삼도농악가락 : サムルノリ
ムーダンチュム/무당춤 : ムーダン(巫女)の舞踊
パングッ/판굿 : サムルノリと舞踊
各種の伝統芸能を楽しめるプログラムだが、その分物足りなさも残る。以前にも同様の公演を見ているが、キム・ドクス率いるハンウルリムのメンバーの技量が上がっているのに感心した。しかし、キム・ドクスは別格。チャンゴを叩きながらの足取りが他の者と全く違う。身体の中から湧き上がるリズム感。
折りしも竹島(独島)問題で世間は騒しく、このような民族的色彩の強い公演へ行くのは躊躇いがないわけでもなかった。が、ごくごく当たり前に公演は始まり、進行し、最後の挨拶でキム・ドクスが一言。「最近世の中では、この土地はこっちだあっちだ、歴史はどうだこうだとうるさいけれど、最後に勝つのは文化の力です。」 積極的に海外公演をこなし、日韓で林英哲、山下洋輔、金子飛鳥などとのコラボも行っている人である。
2005-04-09
[映画]拳が泣く/주먹이 운다
17:45
ソウル劇場2館
下階 H列16番 7000W
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監督:リュ・スンワン/류승완
出演:チェ・ミンシク/최민식、リュ・スンボム/류승범
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ア
ジア大会銀メダリストのボクサーだったカン・テシク(チェ・ミンシク)は1回1万Wで人に殴られる人間サンドバッグ稼業をしている。不良少年ユ・サンファ
ン(リュ・スンボム)は非行を重ねて少年院送りになる。二人はそれぞれの事情でボクシングのトレーニングを始め、新人王戦の決勝で対戦することになる。二
人の主人公はラスト15分の新人王戦まで全く接点がなく、映画は2つの別個のストーリが並行して展開する。その内容は42歳の落ちぶれた中年男と22歳の
不良青年が失ったものを取り戻して行くという、回復と癒しのありがちな物語だが、観客は二人の男の人生を見守り続けた末に迎える新人王戦の場面で二人どち
らも勝たせてやりたいという心情に駆られ、監督が周到に準備した高揚した葛藤に陥らざるをえない。複雑な現代におけるリアルなカタルシス。
2005-04-04
[映画]力道山/역도산
13:00
シネマオズ2館
22番 7000W
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監督:ソン・ヘソン/송해성
出演:ソル・ギョング/설경구、中谷美紀、藤竜也、萩原聖人
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ソル・ギョングのファンサイトが主催した上映会で鑑賞。去年12月の封切時に続いて3度目。
ソル・ギョング演じる力道山のプロレスシーンが話題になる作品だが、それ以外の場面でのソル・ギョングの演技がいい。特に冒頭ナイトクラブの場面では、力道山を知らない世代の私にも力道山という人物と彼の魅力が伝わってくる。99%日本語のセリフながら、力道山の内面が吐露される重要なシーンは韓国語のセリフになるので、韓国人が見ても日本人が見ても、もどかしさの残る作品かもしれない。
興行的に振るわなかったためか、日本での公開は2006年春に延期。日本でどのように受け止められるのか非常に興味深く、公開が待ち遠しい。
[歌舞伎]松竹大歌舞伎・近松座ソウル公演(千秋楽)
16:00
国立劇場 ヘオルム劇場
��階 C列65番 VIP席 90000W(サムソンカード10%割引)
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主催:(韓国)国立劇場
制作:松竹・近松座
出演:中村鴈治郎、中村翫雀、中村亀鶴
中村寿治郎、嵐橘三郎、中村鴈童、中村鴈乃助、中村扇乃丞、中村鴈成、中村鴈五郎、中村鴈洋、中村翫之、中村鴈秀、中村鴈祥、中村鴈大、中村鴈京、中村鴈祐、中村鴈哉、中村又一、中村又次郎、沢村国矢、片岡千志郎
竹本谷太夫、竹本六太夫、鶴澤泰二郎、鶴澤公彦
和歌山富太郎、芳村伊十平、杵屋勝彦、杵屋五功次、杵屋佐陽助、杵屋巳吉、和歌山富之、岡安喜久勝、杵屋勝国修、柏要吉
望月太左吉、望月太左成、望月太左次郎、望月太左一郎、望月忠行、望月太喜三久
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「棒縛り」
幕開から客席の雰囲気がよく、演じる側も心地よさそう。その分、やや崩れた感もあり。音響のせいか、客層のためか、ノリが今ひとつ物足りないのが残念。とは言え、長唄を聴きながら松羽目舞台を見ていると、とてもソウルにいるとは思えない。
「曽根崎心中」
竹本と黒御簾が三日間通して好演。天満屋でダレかけた客席を天神森で再度惹き付けた鴈治郎・翫雀の道行は三日間で最高の出来。カーテンコールの拍手にも熱がこもり、昨日、一昨日の鴈治郎、鴈治郎・翫雀、主な俳優という3回のカーテンコールに加え、最後に鴈治郎が一人で再度登場。盛大な拍手が送られた。
1階満席。なぜか今日は日本人率が高かった。1割程度?
2005-04-03
[歌舞伎]松竹大歌舞伎・近松座ソウル公演(中日)
16:00
国立劇場 ヘオルム劇場
��階 B列60番 VIP席 90000W(サムソンカード10%割引)
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主催:(韓国)国立劇場
制作:松竹・近松座
出演:中村鴈治郎、中村翫雀、中村亀鶴
中村寿治郎、嵐橘三郎、中村鴈童、中村鴈乃助、中村扇乃丞、中村鴈成、中村鴈五郎、中村鴈洋、中村翫之、中村鴈秀、中村鴈祥、中村鴈大、中村鴈京、中村鴈祐、中村鴈哉、中村又一、中村又次郎、沢村国矢、片岡千志郎
竹本谷太夫、竹本六太夫、鶴澤泰二郎、鶴澤公彦
和歌山富太郎、芳村伊十平、杵屋勝彦、杵屋五功次、杵屋佐陽助、杵屋巳吉、和歌山富之、岡安喜久勝、杵屋勝国修、柏要吉
望月太左吉、望月太左成、望月太左次郎、望月太左一郎、望月忠行、望月太喜三久
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「棒縛り」
昨日に比べるとスムーズな舞台。長唄、鳴物も今日は安心して聞いていられるが、ホールが西洋音楽向きなのか、音が柔らかく反響するのがやや物足りない。
「曽根崎心中」
昨日同様、お初(鴈治郎)熱演。昨日に続き、竹本が良い。ただ、生玉、天満屋、天神森と三幕2時間近く通して見続けるのは生理的に辛い。舞台の出来とは別に、客席がややダレ気味なのはやむをえない所か。
1階ほぼ満席。日本関連、演劇関連の大学生グループも目立った。
2005-04-02
[歌舞伎]松竹大歌舞伎・近松座ソウル公演(初日)
19:30
国立劇場 ヘオルム劇場
1階 C列19番 R席 72000W(サムソンカード10%割引)
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主催:(韓国)国立劇場
制作:松竹・近松座
出演:中村鴈治郎、中村翫雀、中村亀鶴
中村寿治郎、嵐橘三郎、中村鴈童、中村鴈乃助、中村扇乃丞、中村鴈成、中村鴈五郎、中村鴈洋、中村翫之、中村鴈秀、中村鴈祥、中村鴈大、中村鴈京、中村鴈祐、中村鴈哉、中村又一、中村又次郎、沢村国矢、片岡千志郎
竹本谷太夫、竹本六太夫、鶴澤泰二郎、鶴澤公彦
和歌山富太郎、芳村伊十平、杵屋勝彦、杵屋五功次、杵屋佐陽助、杵屋巳吉、和歌山富之、岡安喜久勝、杵屋勝国修、柏要吉
望月太左吉、望月太左成、望月太左次郎、望月太左一郎、望月忠行、望月太喜三久
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「棒縛り」
客席に入ってまず定式幕に感激。客の入りは1階で8割程度。両端と後ろは空席が目立つ。幕が開くとお馴染みの所作板を敷いた松羽目舞台。が、韓国のお客さんには全く見慣れない不思議な空間、拍手も声も出ず、客席は静まり返っている。曽根松兵衛(橘三郎)の出にも、次郎冠者(亀鶴)、太郎冠者(翫雀)が出ても拍手一つ起こらない。役者の側も異様に緊張している様子でセリフも芝居もカチコチ、長唄に鳴り物までギクシャクし始める有様。ようやく夜の棒の件から客席に笑い声が起こり始め、役者も長唄も調子を取り戻して、安心して見られるようになった。「竹島(独島)問題」がここまで舞台に影響するとは。
「曽根崎心中」
地方巡業のホール公演同様に下手側に短い花道をつけ、舞台下手には黒御簾も。上手の茶屋に下手の藤棚、生玉の参詣人も本興行と同じ人数を出す、立派な舞台である。天満屋、曽根崎の森の大道具もいつも通り。生玉、天満屋、道行の3幕を休憩なしで一気に見せるが、お初(鴈治郎)の熱演で、舞台は上々。欲を言えば、徳兵衛(翫雀)を鴈治郎とは異なる芸風の役者で見たかった。
終演後、2階ロビーでのレセプションでは、日韓双方「竹島(独島)」問題に触れつつ、「文化交流は続けていかなければ」。鴈治郎も「カーテンコールの時、客席から暖かい拍手をもらって、韓国と日本がもっともっと深い友情を築いていけると思った」と、外交問題に神経を遣いつつの立派な挨拶。
2005-03-27
[映画]マパド/마파도
14:20
ソウル劇場2館
下階・P列19番 7000W
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監督:チュ・チャンミン/추창민
出演:イ・ジョンジン/이정진、イ・ムンシク/이문식、ヨ・ウンゲ/여운계、キム・スミ/김수미、キム・ウルドン/김을동、キム・ヒョンジャ/김형자、キル・ヘヨン/길해연、ソ・ヨンヒ/서영희、オ・ダルス/오달수
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地図にも載っていない小島・マパド(魔婆島? 麻婆島?)には、おばあさん5人(ヨ・ウンゲ、キム・スミ、キム・ウルドン、
キム・ヒョンジャ、キル・ヘヨン)だけが住んでいた。訳あってマパドに渡った男二人(イ・ジョンジン、イ・ムンシク)はパワフルなおばあさん5人にいいよ
うに振り回され……。コリアンエンターテイメント制作の企画物で、おばさん女優5人の主演という異色作。導入部からラストシーンまで、捻りの効いた着想と
洒落た映像で楽しいコメディに仕上がったウェルメイド。人生やっぱり金じゃない。
2005-03-02
[映画]公共の敵2/공공의 적2
11:00
ピカデリー劇場8館
G列5番 6500W
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監督:カン・ウソク/강우석
出演:ソル・ギョング/설경구、チョン・ジュノ/정준호
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先週に続き再見。今回の「公共の敵」は地位も財産もある「財閥二世」(チョン・ジュノ)で、検察庁という組織に属する一検事と社会上層階級の権力者の対
決という図式的な構図。それゆえ、ストーリーがほぼ予想通りに展開するのが難。優秀なエリート検事であると同時に小市民としての実感も堅持しているという
ソル・ギョングの役柄が、脚本においてこなれ切っていない面も。でも、ソル・ギョングはカッコイイ。
2005-02-23
[映画]マラソン/말아톤
17:50
ソウル劇場9館
F列16番 7000W
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監督:チョン・ユンチョル/정윤철
出演:チョ・スンウ/조승우、キム・ミスク/김미숙、イ・ギヨン/이기영
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実年齢は20歳だが知能は5歳という自閉症の青年チョウォン(チョ・スンウ)は、母(キム・ミスク)の指導もあって、子供の頃から走ることが大好き。母と子の二人三脚の努力で42.195kmのフルマラソンに挑戦しようとするが……。自閉症の青年がサブ・スリー(フルマラソンで3時間を切ること)を達成したという実話を基にしたヒューマンドラマ。題材からして感動は保証されたようなものだが、俳優陣の演技力、エピソードを伏線としてきっちり積み重ねた脚本、ファンタジーの要素を残した演出、自然を感じさせる静かな映像と、丁寧な作りに自ずと感動した。
[映画]あの時、あの人々/그때 그사람들
20:35
ソウル劇場12館
��列21番 7000W
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脚本・監督:イム・サンス/임상수
出演:ハン・ソッキュ/한석규、ペク・ユンシク/백윤식
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パク・チョンヒ(朴正熙)大統領暗殺事件を暗殺者の側から描いた作。パク・チョンヒの人物像を好色かつ日本贔屓に描いた点が問題視され、封切直前に当時の
実写フィルム部分がカットされるなど物議を醸した。暗殺を目論む「人々」の切迫感に今ひとつ共感できず、主演二人(ハン・ソッキュ、ペク・ユンシク)が、
それぞれの持ち味と役柄のズレか、二人の演技の質の違いか、最後まで馴染んで見えないのが辛い。素材、演出ともに意欲作ではあるのだが。
2005-02-21
[映画]公共の敵2/공공의 적2
12:20
ソウル劇場8館
��列18番 7000W
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監督:カン・ウソク/강우석
出演:ソル・ギョング/설경구、チョン・ジュノ/정준호
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同じカン・ウソク監督 「公共の敵」の続編。前作で不良刑事だったソル・ギョングが、エリート検事を演じる。今回の「公共の敵」は、地位も財産も手に入
れた財閥二世(チョン・ジュノ)。庶民出身の検事と上層階級の御曹司、一介の検事と検察庁という組織、対立の構図が明確な分、凡庸の感もあり。ストーリー
構成や音楽の使い方など、「踊る大走査線」の影響を受けてるかも? この作品のため一ヶ月余りで18kg痩せたスリムなソル・ギョングはカッコイイ。