2009-09-13

[演劇]狭き門より入れ

 パルコ9階の劇場へ上るエレベーターで、古田新太さんと乗り合わせました。
 たまに(?)ストレートプレイを見に行くと、なぜか古田新太さんと同じ日になることが多いです。不思議。






2009年9月5日(土)19時
パルコ劇場
J列20番台
作・演出:前川知大
出演:佐々木蔵之介、市川亀治郎、中尾明慶、有川マコト、手塚とおる、浅野和之



 この世界は3年後に終わるらしい。それを前提に「新世界」が少しずつ準備されてきていたらしい。「旧世界」から「新世界」へは一部の人間だけが移ることができる。「世界の更新」が行われるのは3日後。
 父の死を機に会社を辞めて実家に戻ってきた天野(佐々木蔵之介)は、「世界の更新」のことを知る。しかも、実家の経営するコンビニが移行の「ゲート」であるらしいことも。
 「世界の更新」を目前に、天野はどうするのか……。



 作品のコンセプトは目新しいものではありません。ベースは「最後の審判」、審判の基準は「自分が行きたがる人は行かれない、人を行かせたい人が行かれる」。舞台見ながら、「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」という言葉が頭に浮かんでました。



 この作品の設定上の面白さは、コンビニを「ゲート」としたことですね。コンビニの店内という空間が「新世界へのゲート」という非現実的なイメージ
にマッチしてます。また、根のない浮草のような時枝(浅野和之)や魚住(中尾明慶)がたむろしても、世界の更新を管理しているらしい怪しげな存在の葉刈
��市川亀治郎)と岸(手塚とおる)が出入りしても不自然でない場所なのですね。面白い。



 ストーリー上の面白さは、「ゲート」を閉じる「柱」というアイディアを持ち込んだところに生じます。「柱」は最後にゲートを閉じる役。必然的に本人は旧世界に残されますが、その代わり「柱」の家族は無条件で新世界へ行かれるという特典あり。
 
正義感が強く周囲と軋轢を引き起こしながら生きてきた天野は、自分が新世界へ行かれないことに気づき、せめて「柱」となることで時枝と魚住を新世界に行か
せたいと考えるようになります。が、「柱」になるために必要な資格は、やはり「他人本位」であること。そこから、天野の苦悩が始まります。
 「生きることは生かすこと」。頭では分かっても、一朝一夕にできる生き方ではありませんものね。



 登場人物のキャラと役者の持ち味がうまく合っていて、見ごたえありました。
 目を引いたのは、父親からコンビニを継いだ天野の弟・雄二を
演じた有川マコト。平凡な小市民で、家族思い。有川マコトのほのぼの演技で、雄二には「新世界」へ行く資格も「柱」になる資格も備わっていることが一目で
わかります。雄二(+登場しない父親)の設定と有川マコトの演技が作品世界を支えてるんですね。



 面白い芝居でした。興味深く見続けられるのに、登場人物に共感しないという点でも。3日後に世界が更新されるなら、「私」は新世界に行かれるの
か、旧世界に取り残されるのか、自分自身を顧みてもよさそうなのに、そういう考えが浮かびません。地球そっくりの別惑星か、異次元に存在するもう一つの地球での出来事を眺めているような感覚の芝居でした。



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