昨年10月、イギリスの役者によるロンドン版「The Diver」を見ました。能「海士」、『源氏物語』「夕顔巻」、能「葵上」、日本で起きた実際の殺人事件(若い女性が不倫相手の幼い子供2人を焼死させた事件)をモチーフとした作品を西洋人(+野田秀樹)が英語で演じた不思議な感覚の舞台でした。
今回は日本版「ザ・ダイバー」。ロンドン版とどう違うのか、入手困難なチケットを何とか手に入れて見に行きました。
2009年8月21日(金)
東京芸術劇場 小ホール1
A列5番
作・演出:野田秀樹
出演:大竹しのぶ、渡辺いっけい、北村有起哉、野田秀樹
ロンドン版の時より、すんなり納得が行きました。言葉のせいだけではないと思うのですが……。
ロンドン版では、モチーフとなっている各素材を無理につなぎ合わせた感じが強かったのです。だから、芝居全体の中で「海士」が取ってつけたように見えましたし、「葵上」の六条御息所と実際の事件の犯人とが女優の中で重ねられると、「六条御息所はそんな女じゃない!」と反発さえ感じましたし。
ところが今回は、母である海士、妻の葵上、愛人夕顔、愛人六条御息所、現代OL、これらの女性が自然に現れたり消えたりしていました。
大竹しのぶが凄かった、のでしょうねぇ。
ロンドン版で大竹しのぶと同じ役を演じたキャサリン・ハンターも素晴らしい役者でした。基本設定はそのままで西洋を舞台に書き換えたら(ハンサムで才能あふれる公爵・気位高い公爵夫人・公爵の愛人の貴婦人の三角関係に、公爵の気まぐれで愛される小間使い、アイルランドの海で犠牲になる母、現代のロンドンの片隅で生きるOL、みたいな感じ?)、キャサリンの持ち味が生きてもっと自然に受け止められたのかも。
今回の舞台を見て感じたことです。
……と書いてて、気がつきました。キャサリン、不倫相手の子供を殺して精神鑑定受けてるOLとしては、舞台上での存在感がありすぎます。身体的にも、演技の質的にも。
逆に、大竹しのぶはいくつになっても「小娘」ができる女優さんなんですね。シアターコクーンの「現代版・桜姫-清玄阿闍梨改始於南米版-」もそうだったのだなぁ。
0 件のコメント:
コメントを投稿