2010-05-02

[記事]失敗したスター・マーケティング

 一週間ほど前の記事ですが、全文翻訳で載せておきます。日本人の目から見ると「名指しでここまで書くの?」ってレベルですが、韓国の新聞記事としては、特に厳しいものではありません。あちこちの公演評の中で指摘されて、すでに世間的に定まっている評価をもとに、最近の傾向として総括してみた、という性格の記事です。

 こうやって、実力のある人が生き残り、舞台のレベルが上がっていくんですよね、韓国って。




大学路はスター・マーケティングの場? 評判の宴会に食べ物がない!
 毎日経済 2010.04.23

 大韓民国公演界の砦である大学路には、毎年咲いては散る花のように、多くの公演が幕を開け幕を降ろしている。その多くの公演の中には、私たちがよく知らない俳優がいるかと思えば、スクリーンまたはブラウン管で見たことのある有名なスターたちが「華麗なる外出」という名目の下に大学路を訪れもする。公演企画会社もまた、「スター・マーケティング」という名で、有名芸能人たちを公演界へ呼ぶ。観客は、普通は出会えないスターたちに、より密接な空間で会うことができるという期待を抱いて劇場にやって来るが、実際には劇場に入る時の期待感が出る時まで持続することは少ない。理由は簡単だ。ミュージカルや演劇は、映画やドラマのようにもう一度やり直すことができない。つまり、公演に与えられた時間内に、NGを出さず、すべてのことを見せなければならないため、それだけ十分な練習と互いの呼吸が重要だ。特に、公演を共に引っ張って行く相手役の俳優との動線ひとつ、やりとりするセリフ一言が不自然であれば、観客に公演の感動を伝えることができないからだ。

 最近、アイドル歌手たちのミュージカル界進出が目立っている。東方神起(동방신기)、スーパージュニア(슈퍼주니어)、少女時代(소녀시대)など、現在株価が最高に高騰しているアイドルたちがミュージカルに進出し、完売行列を作り上げているのは事実だ。観客もやはり主流層は20~30代から10代にまで拡大し、公演界の活力素を吹き込んでいる。しかし、実際にアイドルスターを近くで見ることができるということを除いては、実際に公演が与えてくれる感動を感じるということは難しい。少し前に幕を降ろしたミュージカル『ザナドゥ(제나두)』に出演したスーパージュニアのカンイン(강인) とヒチョル(희철)、そして『ブロンドが凄過ぎよ(금발이 너무해)』の少女時代のジェシカ(제시카)の場合、ミュージカルというジャンルと自身の役柄をまだ正確に把握できていないのに舞台に上がったのではないかと思うほど、セリフ伝達と感情移入に失敗したという評価だ。国内ミュージカルのある関係者は「俳優を舞台に上げるためには少なくとも4週以上の練習を必要とするが、最近出演する俳優たちはわずか1~2週の練習で観客の前に立つ」と、公演界の苦々しい現実を語っている。

 もちろん、俳優たちだけの問題ではない。公演日程を押さえておいて、無理なスケジュールを敢行する所属事務所にも責任がある。しかし、少なくとも俳優の名で観客の前に立つ時には、基本的な心構えは持っているべきなのに、それすらもできないようで、観客の立場からはもどかしい。

 ミュージカル『ミス・サイゴン(미스사이공)』でブロードウェイに進出し、世界的なミュージカルスターとなった俳優イ・ソジョン(이소정)が「観客は常に恐ろしく難しい存在」と言ったように、俳優は観客のために存在し生きていかねばならないことを、アイドルスターたちも知ってくれればと思う。

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 私自身は、『ザナドゥ』、見てません。『ブロンドが凄過ぎよ』は、キム・ジウで見ました。なので、実際にここで指摘されているような舞台だったのかどうか、分かりません。
 また、2008年9月~11月に上演された『ザナドゥ』を「最近」の事例として引き合いに出すことには、違和感もあります。変化の速い韓国、その中でも特に韓国ミュージカル界はこの1~2年で大きく変わってきていますから、1年半前の舞台が「最近」とは思えないのですよね。

 それでも、この記事に力があるのは、『ザナドゥ』に出演したスーパージュニアのカンインとヒチョルは、それ以後現在に至るまでミュージカルの舞台に立っていない、という事実があるからです。同じスーパージュニアのイェソン(예성)とソンミン(성민)は、今年、『ホン・ギルドン(홍길동)』に出ていますから、スーパージュニアのメンバーは機会があればミュージカル俳優としても活動する、という方針は変わってないようなのですが。

 この記事からは、カンインとヒチョルはミュージカル初挑戦なのに1~2週間の稽古で舞台に立ってしまったらしい、と想像されます。それはさすがに無茶ですよね。実際はどうだったのだろう……。

 『ブロンドが凄過ぎよ』は、ちょうど今日からテグ公演が始まりました。ジェシカの出演日は、5月2日(日)2回と5月5日(祝)2回。チケットパワーへの評価は高いです。舞台の方は、全公演終了したところで改めて総括が出てくるでしょうから、注目しておきたいです。

 ところで、記事の中にある「少なくとも4週以上の練習を必要とする」という部分。これって、長いのか短いのか、よく分かりません。「練習」の定義によるのでしょうけど。日本のミュージカル公演は、どのくらいの稽古期間があるものなのでしょうか。

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 韓国ミュージカル情報/09.12.08-スター・マーケティング

2 件のコメント:

  1. 「ザナドゥ」カンインにて拝見しました。
    当日 私の体調が非常に悪くて集中できず 残念ながらあまり記憶に残っていません。
    ただ 舞台上の席は売切れでしたが 客席は少なかったようです。FC割引があったりしましたが ファンが低年齢層であるのにチケット料金が高かったせいもあるかもしれません。
    当時 練習風景を追った番組もありましたので練習期間が1,2週間よりはあったかと思うのですが 確かではありません。カンインはローラースケートは危なっかしかったです。
    キューティブロンドは私もジェシカではなくイ・ハナでしたが 釜山公演を拝見した方によると ダンスは良かったが 歌も演技もまだまだで 全体的に早口でセリフに含みがなかったと。
    稽古が短いということでは モーツアルトのジュンスはチェ・ソンモの代打で 海外活動もこなしながら 稽古期間は15日程度だったらしく 写真集?撮影中も手元に楽譜をもっている姿が撮られていますね。
     

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  2. airinさん
     『ザナドゥ』は興行全体が今一つだったのでしょうか。イ・ゴンミョン、チョン・ソナが出ていて、手堅く作ってる印象を持ってましたが……。
     『モーツァルト』のジュンスの場合、稽古期間が短いのも仕方なかったでしょうね。
     舞台の評判、なかなかよかったですよね。
     韓国は一般に、正直な評価が表に出てくるので、ダメだったものはファンであっても「ダメ」と評価しますよね。それが公演界全体の水準向上につながってるのがいいなぁ、と。
     当たり前のことなんですけれど。

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