先日国立劇場へ行った際、ロビーで気になるチラシを見つけました。今手元にないのでうろ覚えですが、「遺言によってあなたの資産を歌舞伎などの伝統芸能に寄付しませんか?」という趣旨のものです。
あぁ、なるほど~。これって結構イイかも。
子供がないからといってロクにつき合いもない遠縁に遺産が渡るのはどうも……とか、財産を遺族に残すだけでなく社会還元もしたい、などと思っている人には一つの選択肢になりますよね。
伝統芸能ファンだったら、歌舞伎や文楽に遺産を贈るというのは嬉しい選択肢でもあります。贔屓の役者さん、技芸員さんを、自分が死んだ後も応援し続けられるのですから。
この手の「遺贈による寄付制度」、実は、あちこちの大学がかなり採用しつつあります。「遺産は母校へ寄付して!」ということです。独立行政法人化されて寄付を受け入れやすくなった旧・国立大学も積極的に取り入れてます。
ただ、この制度、PRが難しいのです。同窓会名簿を元に「亡くなる時はうちの大学に財産ください!お待ちしてます!」なんてチラシを送ったら、抗議の電話が殺到するのが目に見えてます。大体、自分の母校とはいえ、一生かけて築いた財産を全く見知らぬ若者たちのために譲るというのは、なかなかできない決断ですよね。浅薄な連中に大麻栽培なんかされちゃうご時世ですし。
それにひきかえ、伝統芸能は元来、代々芸を継承しながら時を越えて続いていくものです。ファンは自分と同時代を生きる役者さんや芸人さんの成長を見守っています。初舞台の日から50年、70年と見守り続けることも珍しくありません。そんなファンにとって、「伝統芸能の未来に、それを支える人たちのために、あなたの遺産を役立てませんか」という勧誘なら、耳に心地よく響きます。
伝統芸能への遺贈による寄付、正確には、中央三井信託銀行を通じて「日本芸術文化振興会」へ寄付ができるというものです。マスコミでは 「伝統芸能に故人の遺産寄付 中央三井が信託サービス」 などと報道されたようですが、使途を伝統芸能に限ることができるのかしら?
ちなみに、中央三井信託銀行が遺贈による寄付を扱っている提携先は こちら です。
このサイトから「日本芸術文化振興会」のリンク先へ飛ぶと、そこには記事一覧しかなくて、肝心の 寄付の案内 はPDFファイル。このへんがお役所仕事なんですよね、この団体。もう少しサイトの訪問者の立場に立ってサイト作ってほしいんですが。
大学のリンク先も全部見てみました。やはりPRはどこも控え目。そんな中、目立ってるのが東京大学。「遺贈(遺言信託)によるご寄付のご案内」の中に「寄付者インタビュー」なるページを作成、すでに10人(組)のインタビューが載ってます。宣伝上手だわ~。
翻って、「あなたはどうするの?」と問われたら……遺贈先を検討する前に遺贈する資産が残せるかどうかが問題です。
こんにちは。
返信削除こちらには“初めまして”です。
この問題、実は私も考え始めていたところでした。
まだ漠然とですが、今のところ、自分が「ここ!」と見込んだ劇団や個人に寄贈するしかないのか?と考えていました。
このような具体的な道が開かれつつあると知って、ありがたいです。
この先、こういうことがもっと盛んになってくるかもしれませんね。
そう、その前に遺せるほどかどうかが大問題なんですが。
阿青さん
返信削除いらっしゃいませ~。コメントありがとうございます。
そうなんです、こういう道があると分かると有難いですよね。
今のところ銀行が扱ってるのは、税制面で優遇措置がある提携先だけのようですが、選択肢はこれから増えていくのだろうと思ってます。
子供のない世帯は増える一方でしょうし。
どこにどれだけ遺そうかしら、なんて考えるの、楽しそうですよね。
結果を見届けられない、人生最後の賭け。夢を見られて、幸せかも、です。