パラドックス定数の公演に行ってきました。下北沢に先月オープンした「シアター711」、濃密な空間が作れる、小劇場らしい小劇場でした。
3月31日(火)15時
シアター711
作・演出:野木萌葱
出演:植村宏司、十枝大介、西原誠吾、井内勇希、今里真、山ノ井史、小野ゆたか
1900~1911年頃の日本を舞台に、社会主義運動を繰り広げた幸徳秋水(今里真)、堺利彦(小野ゆたか)、山川均(十枝大介)、木下尚江(西原誠吾)、大杉栄(井内勇希)、荒畑寒村(山ノ井史)。演説と出版で社会主義の実現を推進しようとする彼らが、内山愚童(植村宏司)を仲間に迎え入れたことから、各自の思想と行動のズレが顕わになり、ついには天皇暗殺計画に関わる破目に陥って、破滅へと導かれる、というストーリー。
ある意味「真の革命家」である内山愚童によって、他の面々の社会主義運動が、体制側に潰されることを前提とした自己満足的な知的遊戯なのかもしれないことがあぶりだされていきます。
「インテレクチュアル・マスターベーション」という題名は、つまりは、そういうことなのでしょう。
となると、その「自己満足的な知的遊戯」を舞台上で真剣に演じている役者たちの行為もまた「インテレクチュアル・マスターベーション」なのでは……と思えてくるのが面白いところ。
さらには、この「インテレクチュアル・マスターベーション」というタイトル、人前で口にするのが憚られるタイトルです。例えば、電車の中で「インテレクチュアル・マスターベーション、よかったね~」などと感想を言えば、周囲の人には「#&$*+ル・マスターベーション、よかったね~」と聞こえて、ギョッとされるのがオチなわけで。
その、非合法ではないはずなのに後ろ暗さがつきまとって大っぴらに口に出せない、というところもまた、作中の社会主義運動と重なって感じられてくるのですね。面白い。
構造的に巧みに構築されてます。
役者はセリフが達者で動きも切れる人ばかり。見ていて気持ちよいです。ただ、声がよくてセリフ回しの達者な役者が演説したり言い争ったりすると、かなりウルサイ。ちょっと疲れました。
でも、本気で没頭しないと「インテレクチュアル・マスターベーション」になりませんものねぇ。
一番のお目当て、今里真の芝居がたっぷり見られて満足でした。声とセリフがよくて、繊細な感情表現がうまい。次の舞台も楽しみです。
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