「弾丸MAMAER」、最近注目の劇団と聞き、雨の中を中野まで出向きました。
帰りに佐世保バーガーのお店に寄り道。甘めのソースが観劇後のアマタとカラダにじわっと染み入り、よい感じ。
2009年4月25日(土)14時
中野 ザ・ポケット
K列10番
作・演出:竹重洋平
出演:中村哲人、山口晶由、河合伸之、川崎清美、田仲晶、染谷恵子、木村慎一、安藤純、沢樹くるみ、小林香織、坂田久美子、森本73子、田中しげ美、椿克之、土田卓、市川草太、櫛部哲史、宮下千恵、榎本舞、坂井幸恵、田村理絵
1936年2月26日未明、皇道派の青年将校に率いられた陸軍部隊が首相官邸に潜入、岡部慶介(歴史上は岡田啓介)首相を殺害した……はずが、殺されたのは瓜二つの別人で、岡部首相は女中部屋の押入れに隠れていた……というプロローグで話が始まります。この物語、大枠部分は歴史的事実に基づいています。
青年将校・栗森中尉の指揮下、陸軍兵士に占拠された首相官邸にて。岡部の生存に気づき、官邸からの救出作戦を企てる憲兵3人(中村哲人、山口晶由、市川草太)。遺骸の確認で岡部が生きていることを知った岡部の娘(小林香織)と秘書官・福見(土田卓)。旦那様を守って女中部屋から頑として動かない女中3人(坂田久美子、沢樹くるみ、川崎清美)。
三者は互いを信じ切れず、腹の探り合いをしながら、首相救出に向けて動き出します。
舞台は、首相官邸の女中部屋。畳敷きの和室の正面は一面障子で、障子を開けると縁の廊下、その向こうにガラス窓を通して中庭が見えます。上手の襖は奥の一間に続き、下手の襖は押入れへ。部屋の中、上手隅には座鏡、下手隅には衣桁が置かれてます。
砂壁や襖紙の色合い、障子の桟の繊細さ、座鏡と衣桁以外何もない素っ気ない空間……昭和の家の一間です。私にとっては、懐かしい空間。
舞台手前に一段低くしたスペースを作り、この部分とスポット照明をうまく使って、様々な場面を見せていきます。スピーディーな運びで、物語の緊迫感を支える巧みな演出。
役者全員、脇役タイプの個性的な面々、しかも、皆、うまいです。ドタバタ調の芝居ですが、脚本と演技がかみ合ってバランスのよい芝居になってます。
憲兵のリーダーでありながらビビリの小坂井曹長(中村哲人)、ビビリぶりが笑えます。
何かを隠している女中たち、三人三様にユニークですが、中でも千代(沢樹くるみ)は、訳ありげで思わせぶりで賢しげな美人、という芝居が面白かったです。こういうの、好きです。キャラも役者も。
「貧農」出身の二等兵・船山(木村慎一)は、吉原で働く決意をした妹すず(榎本舞)と、一緒にカレーライスを食べようと約束しています。その健気な約束を伏線として、「カレーライス→××→肥料」と展開させた作者の力技、含蓄に富んでて、感心しました。初めに陸軍兵士が掲げた「日の丸」が、最後に××で汚れた敷布団の「×の日の丸」に取って代わられるのは、作者の風刺心でしょうか。
作・演出の竹重洋平(1976年生)はパンフレットに「昭和初期の国民ほどではないにしても、今を生きる我々も、不安と不満に覆われているのは確かだろう。違うのは、温度である。」と記してます。
戦前と「今」の世相を重ねた上で、そこに「温度差」を見て取り、戦前を舞台として「今」を表現する。先月見た パラドックス定数「インテレクチュアル・マスターベーション」 と通じるものがあるように感じました。
他の作品も見てみたいです。弾丸MAMAER。
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