劇中、シンクロナイズドスイミングのオリンピック選手だったという設定の木野花が、オリンピックでの最高の演技を思い出して語る、こんなセリフがありました。記憶で書いてるので不正確ですが。
「あの時は水の抵抗も全然感じなかった」
水の抵抗感じなかったら、浮力も推進力も得られないってば。
元競泳選手のワタシ、客席でツッコミ入れてました。
『えれがんす』
2月7日(日)13時30分
紀伊國屋ホール
作:千葉雅子・マギー
演出:千葉雅子
出演:渡辺えり、木野花、梅沢昌代、八嶋智人、中村倫也、コ・スヒ
企画・製作:シス・カンパニー
面白かった~。
人物と人間関係の設定にいろいろムリがあって、ありっこない話なのですが、それでも腕のある役者が集まって、それぞれの持ち味しっかり出すと、こんなに面白くできちゃうんだ~という芝居でした。
川上あい子(木野花)はシンクロの元オリンピック選手で、スイミングクラブを経営していたが、クラブは倒産。今日夕方までに建物を明け渡すため、韓国人留学生のイ・スミン(コ・スヒ)と片付けをしている。そこへ、親友でフィギュアスケート選手出身の鶴岡真紀子(渡辺えり)、あい子の妹であい子と真紀子がタレント業をしていた時のマネージャーでもある川上れい子(梅沢昌代)、三流スポーツジャーナリストの宮優(八嶋智人)、あい子とれい子の弟であり真紀子が一時付き合っていた勇一の息子・悦太郎(中村倫也)がやって来て……というお話。
渡辺えりと木野花の漫才で始まります。これがかなり長くてグダグダで、この芝居、何がどうなってるのか……と不安になります。しかも、この日は、オチで渡辺えりがマジでトチって、別の意味で客席大笑い。
90分足らずの芝居で、60分くらいまで、「どうしてこの芝居にコ・スヒを使ったのだろう?」と訝しく思い続けてました。演技に定評のあるコ・スヒが、日本語の不自由な韓国人留学生という設定で、部屋の片付けに使われてるだけ。そこらを歩いてるホンモノの留学生を連れて来てやらせてもよさそうな役に見えるのです。
ところが、ラスト30分で、コ・スヒの真価と存在意義が十二分に発揮されました。様々な思惑や拘りがあって本音で語り合えないあい子、真紀子、れい子の三人に対して、コ・スヒ演じるイ・スミンは「言いたいことは全部言ちゃって」と腹を割って互いの想いをぶつけ合うことを熱く主張。これがもう、まさに、韓国人と日本人なのですね。そうそう韓国人ってそうだよね、日本人ってそうなんだよね、と。
そもそも、スミンが寡黙だったのは、あい子がスミンは日本語がろくにできないと勝手に思い込んで接したためで、スミンは日本語の会話をほぼ理解できるし、かなりスムーズにしゃべることもできると判明するのですが、このあたりのすれ違いも、日本人と韓国人の間でいかにも起こりそうなことで、うんうん、日本人ってそうだよね~と、じわーっと共感。
もしかしたら、他の日本人のお客さんと私とで感動のポイントずれてるのかもしれませんが、でも、コ・スヒの起用はそういうことを伝えたかったのですよね。
濃いキャストを十分に生かした、密度の濃い90分でした。
猫のホテルと千葉雅子は、2006年8月本多劇場の『電界』を見てます。これも中途半端っぽい話なのに、不思議と後味は悪くなく何となく心に残る芝居でした。意外に好きかも。千葉雅子の脚本。
ちなみに、この日は、今は無き @nifty・FSTAGE の旧メンバーが集う mixi コミュニティのオフに参加しての観劇でした。参加者4名のミニオフでしたが、観劇後のお茶会は、芝居の感想、最近見た芝居とこれから見る芝居の話で盛り上がり、楽しい時間を過ごせました。皆さま、ありがとうございました。
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