演目は、幸田露伴に泉鏡花。開演はいつも通り11時で、終演はいつもより一時間以上早い14時45分。ここは本当に歌舞伎座なのでしょうか?
2009年7月25日(土)11時
歌舞伎座
3階A席4列10番台
「五重塔」
幸田露伴の小説を歌舞伎化した作品。昭和58年4月以来の上演だそうで、前回見てると思うけど記憶にありません。谷中・感応寺の五重塔再建を自らの手で成し遂げたい一心に凝り固まった大工十兵衛(勘太郎)が、親方源太(獅童)と弟子の清吉(巳之助)、女房お浪(春猿)、感応寺の朗円上人(市蔵)、配下の大工たちなど周囲の人々との葛藤の末に、大嵐にも瓦一枚はがれない五重塔を完成させる、というストーリーです。
が、十兵衛がどうしてそこまで頑なに一人で仕事を請け負おうとするのか、その背景がよく見えません。勘太郎のセリフは処々で父・勘三郎そっくり、口下手でのっそりという十兵衛の人柄がぶれてしまうのも気になります。
一方、親方源太の獅童は、江戸弁のセリフのテンポが変。十兵衛の実力を認め、何とか二人でうまくやっていこうと骨を折る様も、意気がってカッコつけてるように見えてしまいます。歌舞伎の感覚が身体に入ってないんですよねぇ。
春猿の女房は健闘。夫思いで口うるさい世話女房の役とはいえ、もう少し柔らかみが欲しいところでしたが。相手役の十兵衛・源太が一世代上の役者なら、そのあたりのバランスが取れたかもしれません。
ストーリー的に納得行かないのは、脚本のせいでしょうか。はるか昔に読んだ小説は、結構面白かった印象があるのですけれど。再読してみなければ。
「海神別荘」
泉鏡花の作品です。海底にある宮殿に住む海神である公子(海老蔵)が人間の美女(玉三郎)を妻に迎えるという話。
玉三郎が一生懸命かわいくしゃべってるのも、海老蔵の人間離れした存在感も、伝わってはくるのですけれど……。玉三郎と海老蔵の美貌に興味の薄いワタシには、あまり響かない舞台です。歌舞伎座でなく日生劇場でやるべきお芝居なのでしょう。
蛇の造形と動きが優雅で素敵。幻想的なイメージに相応しい出来で、蛇が登場してゆらゆら動き回る度に目を奪われちゃいました。これはこれで立派な芸。
幕が降りた後、ファンの熱心な拍手に応えてカーテンコールがありました。そう言えば、大向こうは禁止令が出てたらしいです。
カーテンコールの幕も降り、一瞬の間の後、打ち出しの太鼓が鳴り始めました。そう、ここは歌舞伎座。
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