日韓演劇フェスティバル5作品目。台本読んで行きました。全21場(1場平均6分!?)とめまぐるしく場面の変わる脚本をどんなふうに演出するのか興味津々。
2009年6月26日(金)19時
東池袋・あうるすぽっと
下手後方(全席自由席)
作:チョ・ガンファ(조광화)
翻訳:木村典子
演出:鐘下辰男
出演:宇井晴雄、小高仁、前田一世、秦由香里、とみやまあゆみ、中井奈々子、宮山知衣
シナリオ作家を目指すチャンジョン(小高仁)は、恋人のシンヘ(中井奈々子)に執着している。彼の理想は『嵐が丘』のヒースクリフの愛。シナリオのネタ探しを兼ねた探偵業を始め、買物依存傾向のある妹ウンジョン(とみやまあゆみ)の売春を知る。チャンジョンに夫の素行調査を依頼したヨンエ(秦由香里)はチャンジョンと関係を持つ。ヨンエの夫インホ(宇井晴雄)は大学の教え子シンヘに手を出す一方、ウンジョンを買っている。インホの素行調査をするチャンジョンはこの事実を知って……。
現代都市に生きる男女五人の愛と情熱を描いた作品。愛を求める情熱が孤独と空虚感の中で空回りし、身勝手な情欲と執着と化して、自らを破滅へと導いていく。
舞台中央に四辺のみの四角い木枠を置き、これが場面によって向きを変えて、カフェのテーブルやホテルのベッドとなります。周囲には四角いボックスが整然と並べられて、抽象的で無機質な都会を表わしてるのでしょう。
ちなみに、脚本では、舞台中央に天蓋付きベッド、他にもドレッサーやソファ、テーブルと椅子などを置き、「大きな部屋の内部そのままの雰囲気」と指定されてます。
刺激的なストーリーが抽象的な舞台の上で淡々と進みます。登場人物はしばしば激情に駆られてセリフを叫びます。そのギャップが、登場人物たちの孤独、空虚、焦燥を感じさせてくれます。
五人の人物が全員何らかの関係を持ち、その関係性に焦点を当てた脚本なので、各人の背景はほとんど見えません。言わば、タコつぼの愛。性行為が四角い木枠の中の狭い空間で演じられるのは、そうした意味が込められているのでしょう。
作品のテーマに沿って緻密に計算された演出で、面白かったです。
その一方で、舞台を見ながら、ふと、韓国の舞台はもっと親近感のある、笑える舞台なのではないか、とも感じました。
終演後のアフタートークで、へぇ~と思った部分を抜粋してまとめておきます。
◆チョ・ガンファ
◇日本版の感想
空港から劇場に来る途中、車窓からビルが秩序正しく建ち並ぶ光景を見て、窓の中の人たちに近づきたいが行かれないという思いを抱いた。劇場へ来たら、舞台の上には整然とボックスが並んでいて、先ほどの光景と同じだと思った。洗練されていて素晴らしい舞台だった。
◇韓国の舞台
初演時には特に若い女性たちに嫌がられた。昨年の再演時には自分が変わったこともあり、80%以上の人によかったと言ってもらえた。初演では叫びが中心だったが、再演では日常的で、ユーモアや笑いのある舞台にした。
◆鐘下辰男
◇この作品を選んだ理由
日韓交流で日韓の歴史は重要だが、それをあえて抜いて、韓国の現代の芝居を選んだ。
◇スタイリッシュで抽象的な演出の意図は?(観客からの質問)
作品が人間の関係、愛とか関わることとかを扱っているので、日常性を排除した。日常的にすると「異常な男女の物語」になってしまうので。
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