前川知大の劇団イキウメの公演は、SF的作風を反映して若い男性客が多いのですが、今回の公演、客席は若い女性が大半。出演者が変わると客層が全く変わるのですねぇ。当然のことなんですけど、これだけ露骨だといろいろ考えちゃいます。
2009年7月5日(日)19時
シアタートラム
構成・脚本・演出:前川知大
出演:仲村トオル、池田成志、小松和重、歌川椎子、伊勢佳世、浜田信也、盛隆二、岩本幸子
ストーリー
古びた旅館に二人の男がやってくる。
二人はある事件を追ってきたのだが、
そこで会った一人の男と話し込んでしまう。
「この辺りには妙な噂があってね、聞いた話なんだが…」
三人はかわるがわる、奇怪な物語を語っていく。
しかしその話は、いったい誰の話なのだろうか。
少しずつ、追っていたものが姿を現していく。
パンフレットより
小泉八雲の怪談をモチーフに「常識」「破られた約束」「茶碗の中」「お貞の話」「宿世の恋」という五つの怪談を連ねるオムニバス風のストーリーです。「宿世の恋」は「牡丹灯籠」。
物語のベースは、古びた旅館に泊まっている作家(仲村トオル)と休暇で遊びにきた二人の刑事(池田成志、小松和重)が意気投合し、作家の部屋で怪談を語り合うというストーリーです。それぞれの奇怪な話を劇中劇のような形で他の役者も交えて演じてみせます。
正直、最初の「常識」が終わった時点では、「これをあと4つも繰り返すの?」「要は百物語の変形?」と、早くも飽き気味でした。
ところが、物語が進むにつれ、彼らが語る(演じる)奇怪な話と彼らの現実とが交錯し始めます。役者としては観客を自然に引っ張りこんで行くのが難しく、腕の見せ所の多い構成です。
こういうの、池田成志がうまいんですよねぇ。この人の手にかかると、何でもアリになっちゃうところがすごいです。
また、仲村トオルの存在感が、語られる話と現実とが交錯する世界を支えてます。存在感って代わり映えのなさや鈍感さに通じるものでもあるのですが、それがこの作品では効果的に作用してます。
小松和重は、本人が躍起になればなるほど見てる方は笑えるという役どころで、持ち味がよく出てました。
劇団イキウメでお馴染みの浜田信也、盛隆二が脇に回って好演。主演三人と同じ舞台に立つと力不足も目につきますが、二人とも個性ある役者さんなのでこれからも頑張ってほしいです。
独自の世界を持つ前川知大がなぜわざわざ小泉八雲をモチーフにするのだろう? 今更感のある「牡丹灯籠」をなぜあえて取り上げるのだろう? 見る前は疑問符だらけだったのですが、見終えて納得。
前川知大のSF的な作品には、星新一のデジャブがつきまとうのが気になっていたのですが、今回の作品は小泉八雲の怪談をモチーフにしながら独自の世界観も健在、前川ワールドを楽しめる舞台でした。
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