韓国内での海外演劇作品の上演についての著作権料の問題を指摘した記事です。やや恣意的な記事ですが、韓国内で著作権料についての話題が公に取り上げられるようになってきた一例として掲げておきます。
この問題に関心のある方は、以前紹介した『Guys & Dolls』版権問題の記事もあわせてご覧下さい。
◆『欲望という名の電車』著作権を支払うまでにかかった時間は?
日刊スポーツ 2010.02.21
(略)
3月19日から大学路・東崇アートセンター(동숭아트센터)でこの作品を舞台にかける演劇熱戦(연극열전)側は、18日、「国内で最初に正式な公演著作権を獲得して公演する」と報道資料に自慢げに発表した。『欲望という名の電車(욕망이라는 이름의 전차)』は、1955年ユ・チジン(유치진)演出でウォンカクサ(원각사)により国内で初演されて以来、ほとんど毎年上演されてきた。それでありながら、国内初演以後、著作権を支払うのに55年かかった。我々は、有名な人気作品を55年もの間タダで公演していた計算だ。(略)
大学路の一部公演が、今もなおきちんと著作権を支払われないまま上演されている。制作費の規模が大きいミュージカルも、著作権を支払い始めたのはほんの10年前だ。1999年、ミュージカル『ザ・ライフ(더 라이프)』が著作権を支払って上演されるというので、国内で話題になったほどだ。過去、その対価を支払って上演権を獲得した国内の公演会社が、同じ作品を不法に舞台にかける別の公演会社を告訴する事態が起こったこともある。
演劇の著作権ロイヤリティはチケット価格の6~10%が基準だ。ミュージカルは12~15%。零細な演劇制作会社には著作権ロイヤリティが負担になりうる。だからと言って、免罪符を与えることができるわけではないのではないか。ある関係者は「今では、著作権を支払うことを知らなくて払わなかった、と言うことはできない」と説明している。著作権の支払いが自慢でなく当然の慣行となる日を指折り数えて待とう。
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テネシー・ウィリアムズ『欲望という名の電車』の公演で、これまで一度も正式に著作権料が支払われたことがないとは。韓国の様々な事情に慣れてる私もさすがに驚きました。
最近では、きちんと契約を交わし著作権料を支払って制作・上演される公演が主流になりつつあります。なので、韓国の演劇界がこの記事の指摘する「55年間もの間タダで公演していた」ことをどう総括するのか気になりますし、さらに、当然の義務である著作権料支払いについて今更「国内で最初に正式に」と発表されても……という違和感もあります。但し、私は東崇アートセンターの報道資料を元にした公演の記事も読みましたが、東崇アートセンターが「自慢げに」発表したと捉えられるかどうかは微妙だと思いました。資料にわざわざ「国内で最初に正式上演著作権を獲得して」と書き加えていること自体が「自慢」だと言われれば、確かにそうかもしれませんが。
記事に出てくるミュージカル『ザ・ライフ』は、パク・ミョンソンを取り上げたMBCのドキュメンタリー番組でもハイライトでしたね。
『Guys & Dolls』の韓国内上演史を調べた時には、1994年、エイコム(에이콤)制作の『アガシとコンダルたち(아가씨와 건달들)』が正式に版権契約を結んで上演された公演、とありました。正式に著作権料を払ったミュージカルは『ザ・ライフ』が最初となると、1994年の『アガシとコンダルたち』はどんな形での上演だったのか、気になります。
演劇の著作権ロイヤリティが「チケット価格の6~10%」というのは、欧米や日本の事例に基づく数字でしょうか。元々韓国には前例とすべき慣行がないわけですから、海外の状況を見て、このくらいと判断しているということなのでしょうね。
う~ん、勉強になりますねぇ。
☆関連記事
韓国ミュージカル情報/09.11.30-GUYS & DOLLS版権問題
MBC「成功の秘密」 パク・ミョンソン
あ…、いや、これはビックリ!
返信削除いくらなんでもここまでとは…。
ほかの翻訳劇は大丈夫なんでしょうね?と疑っちゃ悪いでしょうか?
「うちはちゃんとしているんだよ」という発表が却って墓穴を掘っちゃった感があるというか。
>当然の慣行となる日を指折り数えて待とう
…って、これまた悠長な…。
良い悪いはともかくとして、こういう概念の違いがあると知っておくのは、あちらの演劇人と話すときに大事なことですね。
本当、勉強になります。
この『欲望という名の電車』の「スタンレー」の人、『アイーダ』でイ・ゴンミョンとダブルで「ラダメス」演ってた人ですね。
阿青さん
返信削除> 良い悪いはともかくとして、こういう概念の違いがあると知って
> おくのは、あちらの演劇人と話すときに大事なことですね。
そうですね。韓国の演劇界でそれなり以上のキャリアをお持ち方は、どこかで関わっているはずの話なんですよね。
今しっかりとやってる方は、過去のことも「あれは不法だったが、当時は…」ときちんと整理しながら話して下さる場合が多いように思います。
現在の公演について言えば、当たればロングランしていくのが当たり前になっている大学路の興行。あれは著作権料に関する契約をどのように処理しているのだろうと気になってます。
話が表に出た例としては、ミュージカル『地下鉄1号線』は、韓国上演1000回(2000年2月)を機に2000年1月以降ドイツの原作者から著作権料を免除されてロングランを続けている、というケースがありますね。