2009-05-23

[演劇]関数ドミノ

 5月21日朝、なぜか5時半に目が覚めて、そのまま眠れず。午前中池袋の大学で授業。午後から人形町で古文書セミナー。赤坂に出て虎屋文庫で和菓子関連の展示を見物。その後、腹ごしらえを兼ねて喫茶店で原稿書き。
 ぐったり疲れて、赤坂RED/THEATER へ。ハス前の薬屋でカフェインドリンク飲みました。絶対寝ちゃうと思って。ところがどっこい、舞台面白くて、目はランラン。瞬きする間もありませんでした。






2009年5月21日(木)19時
赤坂RED/THEATER
E列8番
脚本・演出:前川知大
出演:浜田信也、緒方健児、大久保綾乃、盛隆二、森下創、古河耕史、ともさと衣、窪田道聡、安井順平、岩本幸子



 イキウメ の定期(?)公演「関数ドミノ」。今までに見た作品 の中で、一番親しみやすく、面白かったです。脚本・演出の前川知大、最近すっかり売れっ子ですね。
 今回の舞台の独特の世界観をフライヤーからそのまま紹介。





「ドミノ幻想」では、
世界はある特定の人間を中心にして回っていると考える。
万能の力が特定の個人に宿っており、世界の常識から外れることなくその「力」はひっそりと本人の望むものを与え続ける。
本人に合わせて矛盾なく世界を調整する。
ゆっくりと準備されたその「力」の連続は、本人も気付くことなく、周囲にも気付かれない。
他の人間の運命はその為に調整され、良い方にも悪い方にも変更を余儀無くされる。
ドミノは思いの強さに比例し、スピードを上げる。
最も速いものは「ドミノ一個」と呼ばれ、思った瞬間結果が現れる。
それは奇跡と呼ばれる。




 物語の発端はある交通事故。車が歩行者の5cm手前で透明な壁に衝突するように大破した。事故の目撃者と担当の保険調査員は関係者の一人が「ドミノ」なのではないかと考え、「ドミノ」の実在を立証するための実験を開始する。



 まず、ストーリーの組み立てがうまいです。序盤は不可思議な交通事故と「ドミノ」という独特な世界観で引っ張ります。中盤では「ドミノ」が妄想である可能性もちらつかせつつ、「ドミノ」を立証する実験の成否に関心を引きつけてます。そして、ラストへ。



 世界観自体はこれまでの前川知大の作品と比べると緩く、適度な「抜け感」があります。お陰で肩の力を抜いて見られました。役者ものびのび芝居できてるのではないかな。



 この舞台で「ドミノ」という世界観のリアリティを支えているのは保険調査員(安田順平)。交通事故からも人間関係からも一歩引いた客観的な立場ながら、説明できない不可思議な事故を数多く担当してきた経験から「ドミノ」を信じる側に立つ人物。安田順平がきっちりした所作とセリフで客観性・論理性・信念を持った保険調査員を演じて、「ドミノ」と現実をつないでいます。こういう役者、好きです。



 また、「ドミノ」と見なされる、一見チャラ男だけど芯は意外にしっかりしている作家の左門森魚を浜田信也が好演。次は全く違う役で見てみたい役者です。



 他の役者も皆よかったです。「ドミノ」の存在を固く信じる真壁(古河耕史)、その真壁を信じる秋山(ともさと衣)、「ドミノ」の立証に自分の命を賭けている土呂(盛隆二)、交通事故で彼女が重傷を負い「ドミノ」を憎みつつ「ドミノ」に縋る新田(窪田道聡)、左門と親しく「ドミノ」の影響を受ける田宮(緒方健児)と泉(大久保綾乃)。



 難を指摘すれば、世界観に「抜け感」がある分、突き詰めて考えていくと説明し切れない部分が残ること、でしょうか。
 「ドミノ」の力の根源は「欲望」なのか、「願望」なのか、「強い思い」なのか。あり得ない高さのパンチラ遭遇率は何だったのか。交通事故の瞬間、「ドミノ」は何を思ったのか。
 芝居を見た後に謎が残ると、もう一度見たくなるものです。全体を把握した上で細部を再度じっくり見れば謎が解ける、と思えるからです。が、この作品はそうではないような気がしてます。脚本、読んでみたいです。



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