シェークスピアの「十二夜」を蜷川幸雄が演出した歌舞伎。日本国内で三演目となる今回は、今年3月本場ロンドンでの公演を果たしての凱旋公演と位置付けられてます。
正直、野田歌舞伎「研辰の討たれ」も NINAGAWA「十二夜」も、二演目はそれほど面白くなかったです。初演のインパクトが薄れてしまうのです。
ロンドン帰りの三演目「十二夜」は如何?
2009年6月22日(月)11時30分
新橋演舞場
3階3列40番台
面白かったです。理由は2つ。
一つは芝居のテンポがよくなっていて、ダレずに見られたため。三幕を二幕に書き換え、場面転換もスムーズに感じられました。
もう一つ、こちらの方が大きいのですが、菊之助の芸が上がったため。特に声、セリフがいいです。美しく凛々しい女方と立役の役を芸の力で兼ねてます。「十二夜」という芝居の面白さを歌舞伎の芸を通して堪能できる幸せを味わうことができました。
幕が開くと舞台全面の鏡に客席全体が映っている様が目に入ります。初演以来の変わらぬ演出ですが、毎回、すごいと思います。
全編通じて、花道の出入りが鏡に映って見えるのは、三階客には嬉しいもの。
一幕、織笛姫(時蔵)の赤姫の衣装が妙な色だと思ったら、黒の紗の掛けを羽織ってました。筋書きによると、ロンドン公演の際、この場の織笛姫は兄の喪に服しているのに赤い着物を着ているのはおかしいというロンドンっ子の感覚に対応して、喪を表わす黒の紗を掛けることにしたのだそうです。へぇ~。
今回は凱旋公演なのでロンドン演出そのままに登場。歌舞伎好きの東京っ子の目には「ヘンな赤姫」ですけど、事情を知れば、まぁ納得。
男装して獅子丸と名乗り小姓勤めする琵琶姫(菊之助)が、大篠左大臣(錦之助)への想いを独白する場面では、獅子丸と琵琶姫の声を巧みに混同させ、若衆姿で赤姫の袖遣いを見せてました。男優が演じる男装の姫君。妖艶な倒錯美が醸し出されました。400年前に出雲の阿国が演じた茶屋遊びもかくや。
二幕、丸尾坊太夫(菊五郎)が偽手紙を拾う場面、歌舞伎らしからぬ演出ですが、鏡の効果も面白く。麻阿(亀治郎)はやり過ぎだと思うのですが、まぁいいか。
菊之助の芝居が正当な歌舞伎なので、安藤英竹(翫雀)と麻阿のはじけっぷりの匙加減は難しそうです。
捨助(菊五郎)はもっとトリックスターらしくやっていいんじゃないでしょうか。トリックスターの作る枠組が弱かったのが、菊五郎のためにも、この舞台のためにも、残念。
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