今回は、「韓国映画の情報」ではなく「韓国の映画情報」です。
『アバター』が韓国の歴代興行第1位に躍り出ました。初めの記事は記録達成までの観客動員数とスクリーン数の推移を記したもの、後の記事は映画関係者のコメントを集めたものです。『アバター』人気の要因分析部分は省略して(日本と同じなので)、韓国映画界への影響、韓国映画との比較について語った部分を抄出しました。
今、劇場で見たい映画が2本あります。1本は『アバター』。もう1本は、わずか1万5000ドルの低予算で製作され、全米興行収入第1位を記録した『パラノーマル・アクティビティ』。でも……
◆『アバター』、『怪物』を抜いて映画興行順位1位 聯合ニュース 2010.02.27
��公開72日で1301万突破…映画興行史に新たなマイルストーン-
��全体売上の半分以上を3Dで獲得…韓国の『アバター』売上は世界第8位-
ジェームズ・キャメロン監督の3次元立体映画『アバター』が、ポン・ジュノ(봉준호)監督の『グエムル(괴물)』(2006)を抜き、映画興行順位(観客数基準)1位に上がった。(略)
『アバター』はこれにより4年ぶりに興行新記録を打ち立て、韓国映画の興行史を新たに書き換えた。
昨年12月17日に公開された『アバター』は、公開24日で『トランスフォーマー:リベンジ』(2009)がこれまで保有していた外国映画最多観客記録(約744万人)を更新したのに続き、72日で歴代最高興行記録を保有していた『グエムル』も超えた。『グエムル』は公開80日での1301万人到達だった。
最も速いスピードによる歴代最高売上も達成した。
『アバター』は公開32日で『海雲台(해운대)』(810億ウォン、80日)を圧し、劇場入場券販売売上歴代1位を更新した。『アバター』の入場券売上は、27日現在、約1200億ウォンに及ぶ。
『アバター』の売上スピードがこのように速かった理由は、観覧料が最大2倍(1万6000ウォン)高い3D上映が可能だったためだ。配給社側は、全体売上の56%を3D上映を通して得たと明らかにしている。
『アバター』は昨年クリスマス前後に最大680ほどのスクリーンで上映され、公開して3ヶ月近く経った現在も240~260の上映スクリーンを維持している。この内、3D上映スクリーンは122ヶ所だ。
『アバター』は11週目に前売占有率で1位を記録していることから、配給社側も200程度のスクリーンを当分の間維持するという立場であり、新記録更新はまだ続く見通しだ。(略)
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『アバター』が『グエムル』を抜きましたか~。年末来の勢いを眺めていて、いずれ抜くだろうとは思ってましたが、速かったですねぇ。もっとも韓国のような国では、スピードがなければ記録達成もないのかもしれません。
興味を引かれるのは、この映画、どう考えても中高年層が見に行くとは思えないのに、1301万突破という点。1300万人って、韓国人の3.8人に1人が見た計算です。「12歳以上観覧可」の作品ですから、13歳から45歳ぐらいまでの人たちが大挙見に行ったのでしょうか、それとも若者がリピートしてるのでしょうか。
また、料金が最大2倍となってるにも関わらず、この人気。韓国人が1万6000ウォン払って劇場映画を見る日がこんなに早く来るとはねぇ……。まさに「予想できなかった」です。
先日、『アバター』をソウルの劇場で見たという韓国人に感想を聞く機会がありました。「とにかくすごかった~。『アバター』の後に続けて『チョン・ウチ(전우치)』を見たら、CGやアクションが比較にならないくらい見劣りしてしまってガッカリ。『チョン・ウチ』は『アバター』より先に見ないとダメ」と言われました。
幸い『チョン・ウチ』はすでに見てるので、近々『アバター』を見に行こうと思います。
◆『グエムル』を超えた『アバター』…「予想できなかったこと」 聯合ニュース 2010.02.27
ジェームズ・キャメロンの力作『アバター』がすべての韓国映画を打ち負かし、韓国における劇場公開映画の歴代興行順位の頂上に立った。
国内映画界は「予想できなかったが、驚くことでもない」と、さらなる新たな挑戦課題と受け止めている。
CJエンターテイメント(CJ엔터테인먼트)のチェ・ジュンファン(최준환)映画事業本部長は「3Dは新しい技術で大きな反響を引き起こすだろうと思ったが、ここまでとは予想できなかった」と話した。(略)
チェ本部長は「これが韓国映画の新たな目標になったのではなく、韓国映画が進むべきいくつかの道の中のまた異なる一つの道が生じただけ」と述べた。
映画社「家」(영화사 집)のイ・ユジン(이유진)代表も「初め『アバター』を見た時、新しい経験をする感じはあったが、このように記録を破るとは予想できなかった」と述べた。
イ代表は、「我が国は、一人の監督に10年間、4000億ドルをつぎ込んで、待つことができる環境になっていない」と言い、「想像するすべてのことを実現させることのできるハリウッドの資本と環境は恐ろしいが、我々は我々の得意なことをしっかりやり遂げることが重要だ」と語った。(略)
3D映画を準備しているユン・ジェギュン(윤제균)監督も「ここまでとは予想できなかった」と言い、「残念なことも事実だが、ともあれ記録は破られるためにあるのだから、努力するしかない」と話した。(略)
彼は「今や韓国映画の競争相手は自国の映画でないことが明らかになった」と言い、「以前は韓国映画プレミアムという観客の愛国主義があったが、今はそれが通じない」と指摘した。
『王の男(왕의 남자)』を演出したイ・ジュニク(이준익)監督は「韓国映画全体の年間製作費の2倍以上を投入、品質もよいのだから観客が熱狂するのは必然」と述べ、「結果的として『アバター』が1位となったのは当然」と話す。
イ監督は「ハリウッドはすでに作った技術を売ろうと血眼になっているため、その技術を学んで、さらによいものを作ればいい」とし、「問題は、とてつもなく差のある労働力と資本」と指摘した。
彼は「当面、3D技術を追求することも重要だが、韓国映画に対する製作費が減少する中で、製作から優秀な人材が離れて行く状況を解決するのがさらに大きな問題」と指摘している。
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いろいろな人がいろいろなことを言っていて面白いですね。
結論は、ハリウッドの資本には適わないので、韓国映画は別の道を模索しなければ、ってことでしょうか。
韓国映画を特別扱いしてくれる観客の愛国主義はもう当てにできないとか、製作費が減ったせいで製作に優秀な人材が確保できなくなっているというのは、3Dとは直接関係ない話なのですが、韓国映画のこのような構造的な問題が『アバター』によって改めて浮き彫りにされているのですね。
これまで韓国はハリウッドの大作がヒットしにくい国だったのですが、『アバター』の登場で今後の状況はがらっと変わっていくかもしれません。スクリーンクォーター制も揺れているようですし、今年の韓国映画界は<韓国映画vs外国映画>の勝負の行方が注目されます。
ハリウッドの資本力云々とくれば、1万5000ドルの製作費で全米興行収入第1位になっちゃた『パラノーマル・アクティビティ』、やっぱり見たいのです。ところが、ホラーが苦手なワタシ。とっても見たいけど絶対見たくない。あぁ、どうしょう。