演出のイ・デヨン(이대영)、以前、舞台を拝見したことがあります。A.R.ガーニー作『LOVE LETTERS』のアンディ役。素晴らしいアンディでした。そのイ・デヨンの演出と聞いて、楽しみに足を運んだ公演、期待通りの出来でした。
10月31日(土)15時
大学路・ソルチ劇場チョンミソ/설치극장 정미소
5列6番(5列中央)
原作:ニール・サイモン
翻訳:パク・ジュニョン/박준용
演出:イ・デヨン/이대영
出演:パク・イジュン/박이준、イ・ヨングァン/이영광、チョン・アミ/정아미、チョン・ジョンフン/전정훈、パク・ミニョン/박민영、ファン・スノン/황순홍
『グッド・ドクター』は、二ール・サイモンがチェーホフの短編小説を戯曲化した作品で、大学路ではよく上演される人気作品の一つです。今回の公演は、『グッド・ドクター』から7つのエピソードを選んで構成した舞台になってました。
「プロローグ」 狂言回しである「作家」(チョン・ジョンフン)が登場、創作の困難を語りつつ、芝居へ導入。
「くしゃみ」 妻と観劇に行った小心者の下級公務員イワン(ファン・スノン)は、偶然前の席にいた上司(パク・イジュン)の頭にくしゃみをして唾を飛ばしてしまう。イワンはこの失態を取り戻そうと努力するが、すればするほどドツボに嵌り……。
「略奪」 人の女を略奪することに天才的な才能を持った男(チョン・ジョンフン)は、友人を利用して友人の妻(パク・ミニョン)を誘惑する。妻は次第に男を本気で愛するようになるが……。
「遅れた幸せ」 公園で出会った二人の老男女(イ・ヨングァン、チョン・アミ)。互いに好意を抱きながらそれを口に出せず、相手への思いをただ心の内だけで語るばかり……。
「寄る辺なき境遇」 痛風に悩む銀行支配人(チョン・ジョンフン)の所へ、一人の老婆(チョン・アミ)がやって来て、銀行業務とは無関係に頼りなき自身の境遇を訴え続ける。老婆の一挙一動に支配人の痛風の苦痛は増すばかり……。
「銃声のない戦争」 平和な公園で、毎週火曜午後3時、それぞれ陸軍・海軍出身の二人の老いた退役兵(パク・イジュン、イ・ヨングァン)が、あらゆることで意見を異にし、論争を繰り広げる……
「バースデープレゼント」 「作家」自身の19歳の時の体験として語られるエピソード。息子(ファン・スノン)の19歳の誕生日に父(チョン・ジョンフン)は女性体験をプレゼントしようと、嫌がる息子を説得して夜の街の女(パク・ミニョン)に金を渡すが……。
どのエピソードも、日常にありそうな些細な局面を針小棒大に取り上げて戯画化してみせたものです。
「略奪」では、男の策にはまって夢中になっていく妻の様子が手に取るように見えます。こういう女性、いかにもいそう。
「寄る辺なき境遇」では、相手の状況に頓着せず自分の「寄る辺なき境遇」を愚痴り続ける老婆によって、支配人が「寄る辺なき境遇」に追いやられてのたうち回るのが、傍で見る目には気の毒やら可笑しいやら。
「遅れた幸せ」の男女二人は、ベンチに並んで座り、まっすぐ前を見つめたまま、現実では淡々と言葉を交わし、内心の想いをミュージカル風に歌います。真面目くさった顔とはうらはらに、メロディに乗って吐露される相手への仄かな好意。笑っちゃいました。
「銃声のない戦争」で論争のテーマとなるのは「理想の昼食」。食前酒からデザートに至るまで、二人の意見はことごとく対立し、激しい論戦が繰り広げられます。週に一度の論戦が人生最大の生きがいになっているかのように。二人の退役兵の「今」の生きがいと虚しさを感じられるエピソードでした。
全体に、役者の年齢層が高めで、落ち着いた大人の芝居です。それぞれの役を丁寧に演じることで、人間や日常の中に潜む可笑しみがにじみ出てくるような舞台になってました。
ダブルキャストで、今回チョン・ジョンフンが演じた役をタレント・MCのチョン・ジェファン(정재환)が演じた回もあり、できればこちらも見てみたかったです。
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